キリンビバレッジ株式会社は、「午後の紅茶」や「生茶」、そして「キリンレモン」といった誰もが知る商品を手掛ける、日本を代表する清涼飲料メーカーの一つです。清涼飲料全体が年間5兆円規模という巨大な市場の中で、競争の激しい環境においても、独自の強みを活かし、多くの消費者に支持されています。
今回のインタビューでは、西日本統括本部 九州支社の流通部から原口部長、廣瀧主任、田中主任にお話を伺い、キリンビバレッジが地域や消費者にどのように向き合い、現場から戦略を生み出しているのか、その舞台裏に迫りました。清涼飲料業界ならではの特徴や競争のリアル、そして「午後の紅茶」や「生茶」などの飲料品から『免疫ケア』商品までが生まれる背景には、多くの工夫や挑戦が詰まっています。
キリンビバレッジがどのように消費者や地域と向き合い、新たな価値を生み出しているのか、ぜひその詳細をご覧ください!
清涼飲料業界の舞台裏とキリンビバレッジ
本日はお時間をいただきありがとうございます!まず清涼飲料メーカーについて教えていただけますか?
清涼飲料の市場全体は非常に大きく、年間で約18億ケースが消費されています。金額にすると約5兆円規模です。1ケースには24本が入っていますので、1人あたり年間で約20本の清涼飲料を飲んでいることになります。
それだけ多くの人に愛されているのですね!その中でキリンビバレッジさんの特徴や役割について教えてください。
清涼飲料業界の特徴は、赤ちゃんからお年寄りまで幅広い層に商品を提供できることです。これはビールなどのアルコール飲料とは大きく異なる点です。キリンビバレッジも、「午後の紅茶」や「生茶」、「キリンレモン」など、幅広い層に支持されるブランドを展開しており、その点で非常にユニークだと思っています。
清涼飲料業界には上位5社があると聞きました。競争はやはり激しいのでしょうか?
そうですね。清涼飲料業界の市場シェアは上位5社がほぼ独占しています。特にコカ・コーラやサントリーが強いですが、キリンビバレッジは紅茶カテゴリーで「午後の紅茶」、健康志向の商品で「生茶」など、それぞれのカテゴリで独自の強みを発揮しています。競争は確かに激しいですが、地域や商品カテゴリーごとの戦略が非常に重要です。
地域によって消費者のメーカー嗜好も違うのでしょうか?
そうですね。たとえば、九州ではコカ・コーラやサントリーが非常に強いです。一方で、首都圏ではキリンのブランド力が高い傾向にあります。地域ごとに異なるニーズを掴み、それに合わせた戦略を立てることが求められます。
九州エリアではどのような戦略を取られているのですか?
九州では地元スーパーや飲食店との連携が重要なポイントです。たとえば、地域の食文化や消費者の嗜好に合わせてプロモーションを行っています。また、「午後の紅茶」や「生茶」などのブランド力を活用し、地元に密着したマーケティングを展開しています。競争が激しいエリアですが、地域に寄り添うことで消費者の支持を得ることを目指しています。
地域ごとに異なるアプローチが必要なのですね!「午後の紅茶」や「生茶」といった商品は健康志向とも結びついていると感じます。
そうですね。清涼飲料業界全体が健康志向のトレンドを強く意識しています。キリンビバレッジでも、免疫機能をサポートする商品や発酵技術を活用した飲料の開発に取り組んでいます。消費者の健康ニーズをいち早く捉え、商品に反映させることが、今後の競争においても重要なポイントになります。
健康志向の商品が注目される中で、キリンビバレッジさんの「現場感を大切にする文化」が気になります。
ありがとうございます。私たちは「走りながら考える」という文化を大切にしています。もともと自動販売機事業をルーツとしていることもあり、現場で得られる情報を素早く商品やマーケティング戦略に反映させることを重視しています。この柔軟さが、激しい競争の中での強みになっています。
なるほど。「現場感を大切にする」という姿勢が、競争における勝因になっているのですね。
営業の現場から地域へ:流通部の仕事とは?
流通部の業務内容について、具体的に教えていただけますか?
流通部では、小売企業や流通企業に対して商品を提案する営業活動を行っています。おそらく皆さんもご存じのイオンやコスモス薬品など、大型スーパーやドラッグストア、コンビニエンスストア、食品スーパーといった多様な取引先が対象です。最近ではネット通販にも力を入れており、取扱先の幅がますます広がっています。
取引先が非常に多いですね!その中で、具体的にどのような活動をされているのでしょうか?
流通部の主な活動は大きく4つに分けられます。1つ目は「商品案内と棚の提案」です。新商品をどのように売り場に並べるか、商品配置の提案を行っています。特に、新商品が店頭に並ぶまでのプロセスはとても重要で、競争も激しいです。2つ目は「販促活動」。キャンペーンやチラシを活用して商品の売り上げを伸ばす施策を提案しています。
なるほど、商品を売るための工夫があるのですね!
3つ目は「売り場作り」です。例えば季節に合わせた商品を見やすく配置し、消費者が手に取りやすい売り場を作ります。そして4つ目が「課題解決」。私たちの仕事は単に商品を売るだけではありません。取引先である小売企業が抱える課題を一緒に解決する、いわばパートナーのような存在を目指しています。
課題解決型の営業は、かなりやりがいがありそうですね。普段の業務スケジュールはどのような感じなのでしょうか?
週5日のうち、2〜3日は取引先との商談や店舗訪問などの外勤で、残りは内勤業務です。営業車での移動が多く、月に1500kmほど走ることもあります。移動距離は多いですが、その分、取引先との信頼関係が築けるのがこの仕事の魅力です。
現場での活動が多い分、現場感覚を大切にされているのですね。具体的な事例についても教えていただけますか?
はい、最近では地域と連携した活動が増えています。たとえば、宗像市や古賀市の小中学校で「免疫とは何か」という授業を行い、その後、近隣のスーパー「サンリブ」で関連商品の売り場を設置しました。これは、弊社のプラズマ乳酸菌を使った「元気な免疫プロジェクト」の一環です。このように、地域に密着した取り組みを通じて、商品の価値を直接伝える活動も行っています。
ただ商品を売るだけでなく、地域や消費者の生活に寄り添っているんですね!
取引先や地域の課題を解決しながら、自社商品の魅力を最大限に伝えるのが私たちの仕事なんです!
得意先の課題を解決するパートナー:リテールサポートの仕事とは?
リテールサポートとはどういった部署なのでしょうか??
リテールサポートでは、得意先と一緒に課題を解決しながら、より良い提案を考える役割を担っています。得意先である小売企業の売り場作りや販促活動をサポートしています。ただ商品を売るだけではなく、その企業全体の売り上げが上がるような提案を行うのが特徴です。たとえば、チラシやキャンペーンの効果を分析し、その結果をもとに次の提案を行うことも多いですね。
データを活用した提案をするんですね。具体的にはどのように行われているのでしょうか?
売り場の動向やキャンペーンの成果をデータで可視化し、得意先に提示します。たとえば、特定の商品がチラシに掲載された際にどれだけ売り上げが伸びたか、その貢献度を具体的な数字で示します。それに基づいて、次回の販促計画を立てるのが私たちの役割です。
数字で効果を示すと、得意先の信頼にもつながりそうですね。他にはどのような取り組みをされていますか?
課題解決の取り組みも重要です。たとえばサンリブさんのような得意先に対して、キリンの商品だけでなく、売り場全体の売り上げをどう伸ばすかを一緒に考えます。そのためには、売り場の配置や商品の選定、さらには季節ごとの販売トレンドを踏まえた提案が必要です。
単に自社商品を売るだけでなく、小売店全体の利益を考えるのですね。
そうですね。たとえば、店舗全体の課題をヒアリングし、どうすればお客様が手に取りやすい売り場を作れるかを一緒に考えることも多いです。キリンの商品が売れるだけでなく、得意先全体の利益に貢献できると非常に達成感を感じます。
日々の業務の中で特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
最近の例では、得意先の店舗で大規模なキャンペーンを実施した際、売り場の配置から販促計画、結果のデータ分析まで一緒に取り組みました。その結果、予想以上に売り上げが伸び、得意先の方から「ありがとう、またお願いしたいです!」と声をかけていただけたのがとても嬉しかったです。
直接感謝されると、やりがいが倍増しそうですね。最後に、リテールサポートの仕事で最も大切にしていることを教えてください!
大切なのは、得意先との信頼関係です。私たちは、ただの取引先ではなく、得意先のパートナーとして一緒に課題を解決していきます。そのため、相手の目線に立ち、どうすれば役に立てるかを常に考えています。
信頼でつなぐ現場と戦略!営業と流通が創る価値
営業部と流通部の業務にはどんな違いがあるのでしょうか?
流通部は廣瀧が説明した通り、主にスーパー、ドラッグストア、コンビニエンスストアなどを相手にしています。一方で、営業部は自動販売機を扱ったり、食品卸や問屋さんとの取引を担当しています。たとえば、三菱食品のような大手の企業と協力したり、学校の売店や病院などにも商品を提供しています。これらは卸を通じて行う場合もあれば、直接取引することもあります。
それぞれの特徴があるのですね。新規開拓のような活動も行われるのでしょうか?
新規開拓もありますよ。たとえば、スーパー銭湯やサウナ施設など、新たな需要を掘り起こす取り組みをしています。特に健康志向の飲料、たとえば「おいしい免疫ケア」シリーズやプラズマ乳酸菌を活用した商品を、これらの施設に提案しています。
新しい市場に入る際には、ただ商品を置くだけでなく、その施設の利用者に合った形で健康志向を提案することが重要です。たとえば、オロポ(オロナミンCとポカリスエットを混ぜた飲料)のようなトレンドを取り入れながら、免疫ケアに関連した商品の展開も行っています。
健康志向にマッチさせて開拓していくんですね!プラズマ乳酸菌の取り組みについても教えてください。
プラズマ乳酸菌は、健康を支える重要な技術として注目されています。実際にコロナ禍の初期、ダイヤモンド・プリンセス号で感染が拡大した際には、この乳酸菌が含まれる商品を乗客や船員の方々に提供しました。この取り組みは学会でも評価され、非常に名誉ある賞をいただきました。
このように、健康志向の商品開発は当社の重要な柱の一つです。特にコロナ以降、免疫や健康の重要性が社会的に認識されるようになり、私たちの商品もそのニーズに応える形で進化しています。
健康志向の商品は、今後さらに伸びていきそうですね。具体的に、どのような商品カテゴリーに力を入れているのでしょうか?
私たちは現在、3つの主要カテゴリーに力を入れています。1つ目は「ヘルスサイエンス」、つまりプラズマ乳酸菌を活用した健康関連の商品です。2つ目は「紅茶カテゴリー」で、「午後の紅茶」は市場シェアの約6〜7割を占める主力ブランドです。そして3つ目が「お茶カテゴリー」で、「生茶」のリニューアルが成功し、昨年比で130〜140%の売り上げを達成しました。
さらに、これらのカテゴリーに加えて、「ファイア」というコーヒーブランドも強化しています。コーヒー市場では競争が激しいですが、差別化を図りながら進めています。
リニューアルされた「生茶」の白いラベルは、確かに印象的でした!
デザインの変更だけでなく、商品のコンセプトやパッケージも消費者の視点で工夫しています。これらの取り組みが成功し、結果として売り上げ増加につながっています。
ラベル変更だけで売り上げがそれほど変わるものなんですね!
ええ、本当です。店頭で商品を選ぶ時間は平均して2~3秒と言われており、見た目の印象がとても重要です。ラベルやパッケージを工夫することで、消費者の目に留まりやすくなり、売り上げに大きな影響を与えます。
視覚的な工夫がこれほど影響するとは驚きです。それは営業部が考えるのでしょうか?
主にはマーケティング部や商品開発部が担当しています。私たち営業部は、それを現場でどう活かすかにフォーカスしています。また、営業からマーケティング部門へ異動するケースもあるので、キャリアの幅は広いですよ。
商品をどの棚に置くかでも売り上げが変わると聞きましたが、棚割りはどう決めているのですか?
棚割りでは、日本人の身長や視線に合わせた配置が重要です。例えば、目線に入る高さや手に取りやすい位置が売り上げを左右します。最近では大手メーカーが棚割り全体の構成を提案することが多いですが、キリンは得意先の利益を優先し、全体の売り上げが上がる提案を心がけています。
そういった提案を受け入れてもらうには、信頼関係が大切ですよね。
その通りです。得意先の担当者のタイプや好みを把握し、こちらの意図を明確に伝えることが大切です。例えば、データに基づいた具体的な提案をすることで、納得していただきやすくなります。
具体的な成功事例はありますか?
紅茶の棚を拡大してもらった企業での事例があります。キリンの紅茶カテゴリーはシェアが高いので、「棚を増やせば売り上げが伸びる」という提案が採用され、実際に大きな成果を上げました。
結果が出るとやりがいがありますね。
ええ、得意先と共に売り場を作り、成功を分かち合えるのがこの仕事の醍醐味です
地域性を活かした戦略で挑むキリンの営業現場
商談の場では、食品と飲み物を合わせて試していただくこともあるんですか?
はい、あります。実際にお客様に食べ物と飲み物を合わせて試してもらいながら、提案内容を体感していただくことは効果的です。
商品を置いてもらう際には、バイヤーさんの好みが影響することもあるのでしょうか?
影響しますね。バイヤーさんも数字を意識して選定を行いますが、やはり個人の好みが商談に反映されることも少なくありません。データに基づいた提案をしても、「この商品はいらない」と言われることもあります。
面白いことに、スーパーで買い物をするのは主に女性ですが、バイヤーの多くは男性なんです。このギャップが提案においてデータを活用する重要性を高めています。
先ほども言われていましたが地域によって売れる商品の傾向が変わるんですよね?
地域によってかなり違います。たとえば、オフィス街の近くではコーヒーが人気ですし、独特な地域性で言うと九州南部は甘い飲み物がよく売れます。こうした地域性を分析し、それに基づいて提案内容を変えています。
九州ではキリンさんのシェアが低いと伺いましたが、他の地域と違う点は何ですか?
九州の方々は「これ」と決めた商品を長く愛用する傾向があります。一方で、東京や名古屋の方々は新商品に興味を持つことが多いですね。この違いを踏まえた戦略が必要です。
九州ではシェア拡大が簡単ではありませんが、その分やりがいがあります。地域特性に合わせた戦略で少しずつ成果を出していくことが目標です。
地域性に合わせた提案をするには、データ分析が重要になりそうですね。
その通りです。データを活用して地域ごとの特性を把握し、説得力のある提案を行うことが成功の鍵となります。
「午後の紅茶エキスパート」が語る紅茶の魅力
原口さんの名刺に「午後の紅茶エキスパート」と書かれているのを見ましたが、これはどのような役割なのでしょうか?
午後の紅茶エキスパートは、紅茶の知識や技術を深めるための資格です。スリランカでの研修や試験を経て取得しました。セミナーで紅茶の魅力を伝える活動をしたり、キャンペーンでお客様に紅茶の正しい入れ方を紹介するなど、紅茶文化を広げる役割を担っています。
そんな資格があるなんて知りませんでした!午後の紅茶は発売当初から人気があったのですか?
1986年の発売当初から人気でした。当時、小泉今日子さんがプロモーションに関わり、ブームを巻き起こしました。その後、無糖やプラズマ乳酸菌入りの商品など時代のニーズに応じて進化を続けています。
紅茶の消費量はどうなのでしょうか?
世界的には紅茶の消費量が高いですが、日本ではまだ日本茶やコーヒーが主流です。これからさらに紅茶の魅力を広めていくのが私たちの課題の一つです。
午後の紅茶シリーズの中でストレート、ミルク、レモンの中で一番売れているのはどれですか?
実は、レモンティーが一番人気なんです。昔はストレートティーが主力でしたが、時代の流れとともに味の好みも変化しています。特に子供にも飲みやすいという理由でレモンティーが好まれていますね。
紅茶の売り上げが伸びている理由は何なのでしょうか?
一つは、紅茶が持つ健康効果を伝える取り組みを進めているからだと思います。たとえば紅茶には「紅茶ポリフェノール」という成分が含まれていて、これが脂肪を分解して流す役割をしてくれるんです。焼肉や中華料理など脂っこい食事をした後に紅茶を飲むと、口の中がさっぱりして次の食事がしやすくなるんですよ。
それは初耳です!飲み物を選ぶときに、そういった効果まで考えたことはなかったです。
実際、まだまだ知られていない効果なんです。だからこそ、紅茶が持つ新しい価値をもっと伝えていきたいと思っています。
おにぎりと紅茶を合わせるCMもありましたよね。あれには驚きました。
そうなんです!「食事と紅茶」という切り口で、新しい楽しみ方を提案しています。来年も食事と紅茶の相性をテーマにしたキャンペーンを展開する予定です。
紅茶がそんなに食事と合う飲み物だなんて、もっと早く知りたかったです。
紅茶文化がもっと広がると嬉しいですね。日本茶だけでなく、紅茶にも素晴らしい可能性がたくさんあります。
今日はたくさんのお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました!清涼飲料業界やキリンビバレッジさんの魅力について深く知ることができて、とても勉強になりました!
こちらこそ、熱心にお話を聞いていただいて嬉しかったです。清涼飲料業界にはまだまだ可能性が広がっています。皆さんが今後どんな分野で活躍されるか楽しみですし、またどこかでお会いできる日を楽しみにしています!
ありがとうございます!私たちも今日伺ったお話を就職活動にしっかり活かしていきたいと思います。午後の紅茶や生茶を飲むたびに今日のお話を思い出しそうです。
それは嬉しいですね(笑)。ぜひこれからもキリンビバレッジの商品を楽しんでいただきつつ、就職活動も頑張ってください。皆さんの未来を応援しています!
今日は本当にありがとうございました!
今回のインタビューを通して、キリンビバレッジ流通部の仕事がただ商品を届けるだけではなく、取引先や地域、消費者の間で信頼を築きながら課題を解決していく仕事だということがよく分かりました。商品配置や販促活動の裏側には、細かなデータ分析や、相手の目線に立った提案があることを知り、そのプロセスに驚きと新鮮さを感じました。
流通の現場で積み重ねた経験が、地域や消費者にどのように価値を届けているのかを学び、自分たちのキャリアにも置き換えて考える良いきっかけになりました。これからキリンビバレッジが地域とともにどんな未来を描いていくのか、ますます楽しみです!