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インタビュー

博多港を支える老舗企業が語る、物流業界の未来

女性社長が語る、物流業界の未来と「変わり続ける覚悟」

「物流」と聞くと、トラックで荷物を運ぶ仕事を思い浮かべる人が多いかもしれません。

けれど実際には、物流はもっと複雑で、私たちの暮らしを根底から支えている存在です。

今回お話を伺ったのは、博多の老舗運輸会社「相互運輸」の八尋社長。

家業を継ぎ、男性中心と言われてきた物流業界の中で、新しい挑戦を続けてきました。

物流の本当の役割、老舗企業を率いる覚悟、そして「今」を生きる学生たちへのメッセージまで、じっくり伺いました。

イメージと違う?運輸会社の仕事とは

正直、運輸会社って聞くと、トラックで荷物を運ぶイメージしかなくて。やっぱり男性の仕事っていう印象が強いです。

よく言われます(笑)。でも実は、トラックで運ぶのは物流のほんの一部分なんですよ。

一部分、ですか?

うちの場合は、海外から船で入ってきた荷物を港で受けるところから始まります。そこから倉庫で保管して、検査をして、最終的に陸送で届ける。その一連の流れすべてを担っています。

検査までやっているんですね。

そうなんです。密輸品や危険物が混ざっていないかを確認するのも私たちの役割。港から陸へ、物流の“根っこ”を支えている仕事ですね。

根っこ、という表現がしっくりきます。

博多港は福岡市の財政にも大きく関わっていますし、ここが止まると、食べ物も服も、生活に必要なものが届かなくなる。そう考えると、責任の大きい仕事だなと感じます。

想像していた以上に、たくさんの人が関わっているんですね。

本当にそうです。いろいろな人が苦労しながら、心が折れそうになりながらも、バトンをつないで成り立っている。それが物流だと思っています。

「継ぐものだと思ってた」—— 家業を背負う覚悟

社長は、いつ頃から会社を継ごうと思われていたんですか?

「継ごう」と決めたというより、気づいたら「継ぐもの」だと思っていました。私は一人っ子で、小さい頃からそういう意識があったんです。

お父様から期待されていたんですか?

いえ、逆でした。父はこの業界が男性社会だからこそ、「女の子に継がせるつもりはない」とずっと言っていました。

反対されていたんですね。

反対とまでは言わないですが、苦労をさせたくない、という親心だったと思います。でも、家では業界の話を聞いたり、関係者の方と食事をしたり、自然とその世界に触れて育ちました。

環境としては、もう物流の中にいたんですね。

そうですね。父が弱音を吐く瞬間も見てきましたし、「この先どうしようかな」とつぶやく姿も覚えています。それを聞いて育ったからこそ、「じゃあ私がやるしかない」と思ったのかもしれません。

周囲の反応はどうでしたか?

親戚からは「売ったらいい」「そこまでして続けなくていい」という声もありました。でも、私たちの家系は長く博多港で生きてきたんです。形を変えながら、この街と一緒に続いてきた。その歴史を次につなぐのが、私の役割だと思っています。

男性中心の業界で、女性が働くということ

女性だからこそ苦労されたことはありますか?

今でもありますよ。例えば、夫婦別姓の問題。行政手続きで戸籍上の名前と仕事で使う名前が違うと、説明だけで一苦労です(笑)。

制度面での壁ですね。

そうなんです。女性活躍って言われますけど、実際にはまだ引っかかる部分が多いと感じます。

今日見学した現場では、女性社員の方も多くて印象的でした。

ありがとうございます。ただ、現場作業をする女性は、まだ少数派です。

女性でも現場作業ってできるものなんですか?

体力的な差はもちろんあります。でも、それを理由に選択肢を狭める必要はないと思っています。体を動かすことが好きな女性もいますし、やりたい人が挑戦できる環境はあっていい。知られていないだけで、そういう方はきっとたくさんいると思います。

老舗企業は「変わらないと続けられない」

会社経営で、今特に力を入れていることは何ですか?

多様な人が働ける環境づくりですね。それから、AIで仕事がなくなるってよく言われますけど、物流はむしろ最後まで残る仕事だと思っています。

最後まで残る仕事、ですか。

確かに、効率化できる部分はAIやシステムに置き換わっていくと思います。でも、港の現場や倉庫、荷物の状態を見て判断する仕事って、最終的には人の目や感覚が必要なんです。

天候やトラブル、その場その場で起こる想定外のことに対応するのは、まだ人にしかできない。だから物流は、なくなるというより「形を変えながら続いていく仕事」だと思っています。

なるほど、人の判断が欠かせないんですね。

そういう部分も、きちんと伝えていきたい。でも、それだけでは会社は続かないので、新しい事業にも挑戦しています。

老舗企業だと、変化への反発もありそうですが。

もちろんゼロではありません。でも、変わらなければ老舗は続けられない。時代の流れを味方につけることが、今は必要だと思っています。

反対意見が出たときは、どう向き合うんですか?

完璧な正解はないので、柔軟にやるしかないですね。失敗しても大したことない、くらいの気持ちで挑戦しています。

社長と社員の距離が近い会社

社長は社員の方との飲み会にも参加されると聞きました。

はい。賛否はありますが、200人足らずの会社なので、顔が見える距離感を大事にしたいんです。命をかけて仕事をしてくれている方々への感謝を、直接伝えたいと思っています。

社員の方から飲み会に誘われることもあるんですか?

ありますね。基本的に、誘われたものは断らないようにしています。

それって、なかなかできることじゃないですよね。

距離を保ちたい人もいると思いますし、正直うちはちょっとめんどくさい会社かもしれません(笑)。でも、そういう場だからこそ、本音が聞けることも多いんです。

新入社員へのメッセージで、必ず伝えていることがあるそうですね。

「一人で抱え込まないでください」と必ず言います。先輩でも上司でも、私でもいい。吐き出せる場所を見つけてほしい。それを受け止める人が、うちにはいると思っています。

学生へのメッセージ:「今しかない時間」を使ってほしい

僕たち、今が一番時間のある時期だと思うんですが、この時間をどう使うべきだと思いますか?

とにかく、今いる場所から出てほしいですね。

学校や今の生活から、一度離れてみるということですか?

授業や単位は大事です。でも大学生って、環境を変えやすい時期でもある。旅に出たり、人に出会ったり、今いる場所とは違う世界に身を置いてほしいですね。

ちょっと怖さもあります。

怖いですよ。でも、今なら取り返しがつく。体と安全だけは大事にして、好奇心のままに動いてほしい。あとで振り返ったとき、「あの経験があったから今がある」って思えるはずです。

どんな人と働きたいか

社長が「この人面白いな」と思うのは、どんな人ですか?

人生経験をたくさん話してくれる人ですね。あれもやった、これもやった、っていう好奇心旺盛な方。

一つの道を極める人とは違うタイプですね。

そうですね。長続きしなくてもいい。面白そうと思ったら動いてみる、そのフットワークの軽さがある人は、きっと人生を楽しめると思います。

物流の奥深さ、老舗企業を継ぐ覚悟、女性社長として切り拓いてきた道、そして「今しかない時間」をどう生きるか。

相互運輸の八尋社長の言葉には、教科書には載っていないリアルなキャリアのヒントが詰まっていました。

就活は、知らなかった世界に踏み出すチャンス。

業界も、働き方も、生き方も、選択肢は一つではありません。

その一歩が、未来の自分をつくっていくのかもしれません。

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