「住宅業界」と聞いて、どんな仕事を思い浮かべますか?
モデルハウスで家を案内する営業、図面を引く設計士、あるいは現場で働く大工さん——そんな漠然としたイメージしか持っていない就活生も多いのではないでしょうか。
しかし、パナソニックホームズ北九州で働く人たちにとって、家をつくるという仕事は「人と人との信頼関係をつくる」ことそのものです。
今回は、パナソニックホームズ北九州の乙吉社長に、学生レポーターがインタビュー。
営業という仕事の本質、住宅業界で働く面白さ、そして「社長になる」というキャリアのリアルまで、ざっくばらんに語っていただきました。

建てて終わりじゃない。“一生のお付き合い”を貫く仕事
今日はよろしくお願いします。まずは、パナソニックホームズ北九州さんがどんな会社なのか教えていただけますか?
はい、よろしくお願いします。当社は1986年、今から約40年前に設立された会社です。もともとは、大阪にあるナショナル住宅産業——今のパナソニックホームズ本体の住宅を、北九州で販売する代理店としてスタートしました。その後、いくつかの会社との合併を経て、パナソニックホームズ北九州株式会社という形になりました。
そんなに前から続いているんですね!今はどんなエリアで活動しているんですか?
北九州市を中心に、筑豊エリアや行橋・中津方面など、地元密着で営業しています。現在は社員が約70名。決して大きな規模ではないですが、これまでに6500件以上の住宅を建ててきました。お引き渡しして終わり、ではなく、アフターサービスやリフォームも含めて、ずっとお客様とつながり続けているのが私たちの特徴です。
「家を建てて終わりじゃない」って、ちょっと驚きました。そういう長いお付き合いが前提なんですね。
そうですね。私たちは“暮らしのパートナー”であるべきだと思っています。たとえば、10年後にリフォーム、20年後に子ども世代が新築、そんな形で世代を超えたご縁が続くことも少なくないんですよ。
そこまで長く関わるって、住宅会社ならではの関係ですね。ところで、家の性能についてもこだわりがあるとお聞きしました。
はい、特に力を入れているのが耐震性です。日本は地震大国なので、住宅の安全性は何より重要。おかげさまで、阪神淡路大震災、熊本地震、そして能登半島地震など、どの大規模災害においても弊社の住宅で全壊・半壊した例はありません。
それはすごいですね…!安心して暮らせる家って、まさに命を守るものなんですね。
その通りです。そしてもう一つ、私たちの家の特徴として、TOTOさんとコラボした外壁タイルがあります。光触媒という技術を使って、太陽の光と雨で自動的に汚れを分解・洗い流してくれるんですよ。
まさに、北九州発の技術って感じですね!TOTOさんと一緒に作ってるなんて。
そうなんです。実は、以前その技術開発に携わっていた方と、思いがけない場所でお会いしたこともありまして。「あの技術、いま使われてるんですか?!」と驚かれていました。長年残り続けている技術なんだと、私たちもあらためて実感しましたね。
そういうエピソードがあると、より身近に感じられますね。
家を売るのではなく、人と信頼を結ぶ。それが営業の本質
営業職って、「家を売る仕事」っていうイメージが強いんですけど、実際にはどんなことをされているんですか?
確かに「売る」という側面もありますが、実際には「信頼関係を築く仕事」と言った方が近いですね。私たちは住宅展示場で出会ったお客様と、まずは雑談レベルの会話から始めて、暮らしのイメージを共有し、打ち合わせを重ねて、ようやく形にしていきます。何もない土地に、ゼロから一緒に“暮らし”をつくっていくんです。
なるほど…車と違って、完成品を「これです」って見せるわけじゃないから、信頼がないと決められないですよね。
そうそう。住宅って、多くの人にとって人生最大の買い物ですからね。信頼がなければ契約までたどり着けませんし、完成して終わりでもないんです。だからこそ、私たちは“売る”よりも“寄り添う”という姿勢を大事にしています。
長く関係が続くって、すごいことですよね。実際に、どれくらい長くお付き合いすることがあるんですか?
最初に担当したお客様とは、もう38年の付き合いになりますよ。いまだに年に数回ご挨拶に伺って、お茶を飲んで、世間話をして帰る、そんな関係です。お中元に手作りのブルーベリージャムを毎年送ってくださる方もいらっしゃいますよ(笑)
えっ、38年! もはや親戚じゃないですか。
ほんとに(笑)。しかも面白いのが、お子さんが大きくなって結婚したときに「うちもパナソニックホームズで建てます」って言ってくれるケースもあるんです。三世代にわたってお手伝いしたこともありました。
そうやって“紹介の輪”が広がっていくんですね。
営業って、信頼の積み重ねですからね。信頼されれば、新しいご縁にもつながりますし、自分が信じられているって実感できる。それが営業の醍醐味です。
でも信頼されるって、簡単じゃないですよね。普段から意識していることってありますか?
まずは基本中の基本ですが、「約束を守ること」。時間に遅れない、言ったことをきちんと実行する。それが積み重なると、少しずつ信頼されていきます。私はいつも「約束の5分前には現場にいよう」と社員にも伝えています。
たしかに、言葉より行動で示すことって大事ですよね。
まさにそうです。あとは、「要望を聞くだけじゃなくて、提案すること」も大切。たとえば「こうしたらもっと暮らしやすくなりますよ」と一歩踏み込んだ提案ができると、お客様は“この人に任せてみよう”と思ってくださる。単なる御用聞きで終わらない姿勢が必要です。
なんだか、営業ってすごく人間らしい仕事なんですね。ただ商品を説明するだけじゃないんだなって思いました。
そうですね。最初は誰でも緊張しますし、うまくいかないこともあります。でも、誠意を持って一人ひとりのお客様と向き合えば、必ず信頼は生まれるんです。
ゼロから育てる環境がある。未経験でも安心できる成長環境

住宅の営業って、なんだかすごく奥が深いですね…。でも、もし自分が入社してすぐにお客様と信頼関係を築けるかって考えると、ちょっと不安になります。
うん、不安に思うのは当然ですよ。私たちの仕事は、最初から全部できる前提ではありません。だからこそ、育てる環境を整えているんです。
「育てる環境」というのは、具体的にどんなものですか?
新卒で入社すると、まずは社内で1週間ほどの導入研修を受けてもらいます。北九州の事業所で、会社の成り立ちや地域の特徴、仕事の流れなどを学びます。その後、関西のパナソニックグループの研修センターに行って、全国の同期と一緒に泊まり込みでの研修が始まります。
同期が全国にいるって、心強いですね!
そうなんですよ。営業だけでなく、設計や施工、製造など他職種の仲間もいて、交流も広がります。営業研修は2〜3週間、社会人マナーから住宅知識までみっちりやります。社会人としての基礎も、きちんと学べる環境です。
基礎から学べるのは安心ですね。研修が終わったらすぐに一人で営業ですか?
いえいえ、すぐ一人にすることはありません。帰ってきたら、先輩社員がしっかりついて、OJTで少しずつ実務に慣れてもらいます。いきなり任せるようなことはせず、経験に応じて段階的に成長できるようにしています。
新卒でも安心してスタートできる仕組みになってるんですね。
それに、入社3年目までは定期的に関西の研修所に戻って、集合研修があります。そこで自分の理解を整理したり、同期と近況を報告し合ったりして、リフレッシュもできる。長い目で見て育てる、というのが私たちの方針です。
全国の同期とずっとつながっていけるって、すごくいいですね。モチベーションにもなりそうです。
まさにそこがポイントなんです。同じスタートを切った仲間と励まし合いながら、少しずつステップアップしていける。弊社の強みは、個人任せにしない“育成力”にもあると思っています。
研修って堅苦しいイメージがあったんですけど、仲間との絆や成長を感じられる時間でもあるんですね。
ええ。知識を得るだけじゃなくて、“自分がこの会社の一員なんだ”という実感を持てる機会にもなってほしいんです。だから研修も、大切な「スタートライン」だと考えています。
失敗から逃げなかった。社長が語る“人としての成長”
社長って、最初から住宅業界に興味があったんですか? 入社のきっかけが気になります。
いや、最初は特別「住宅が好き!」という感じではなかったですよ(笑)。ただ、人と関わる仕事がしたいとは思っていて、それがたまたま住宅営業だったんです。正直、入社してすぐは何も分かっていませんでした。
今でこそ「信頼関係が大事」っておっしゃっていましたけど、最初は失敗もあったんじゃないですか?
もう、たくさんありましたよ。特に一番印象に残ってるのは、私が担当した最初のお客様。お子さんが音楽をやっていて、ピアノのために音響にこだわった家を建てたいっていうご希望だったんです。ところが、私が音響の基本をきちんと理解してなくて、設計ミスをしてしまってね…。完成したら、音の響きが思っていたのと違って、すごく叱られました。
それは…めちゃくちゃプレッシャーですね。
ええ、ものすごく落ち込みました。でも、そこで逃げなかったんです。詳しい人に聞いて学び直して、最終的には納得いただけるように音響を改善しました。お客様も「ちゃんと向き合ってくれてありがとう」って言ってくださって、今でもご縁が続いています。
失敗から信頼を築けるって、かっこいいです。
ありがとう。大事なのは、失敗を隠さないこと。そして逃げないこと。最初から完璧じゃなくていいんですよ。私もそのときは新人で、右も左もわからなかった。でも、一生懸命さと誠意があれば、ちゃんと伝わります。
そういう経験が、今の社長という立場にもつながってるんですね。
そうかもしれませんね。もちろん、社長になるにはそれなりの努力も必要です。営業成績だけじゃなくて、上司や周囲との信頼関係を築くことも大事。それに、「誰にでも同じ態度で接すること」も大切にしてきました。表ではいい顔をして、裏では違う…っていうのは、どこかでバレますから。
確かに、そういう姿勢って信頼される人の共通点かもしれないですね。
それからもうひとつ大事なのが「縁」と「運」ですね。いい上司に恵まれたというのは、運が良かったと思っています。でも、その縁を活かすのは自分次第。チャンスが来たときに逃げない、期待に応えようと努力する。それが積み重なって、少しずつ道が開けていくんです。
じゃあ、社長に任命されたときって、嬉しさとプレッシャーの両方があったんじゃないですか?
まさに半々ですね。もちろん光栄でしたけど、それ以上に「自分にできるんだろうか」という不安もありました。でも、社員のみんなを信じて、一歩ずつやっていくしかないと思って引き受けました。
責任の重さを受け止めながら前に進む姿勢、すごく勇気をもらえます。
ありがとう。不安はあって当然。でも、不安を減らすには勉強と挑戦を続けるしかない。そして何より、自分のことだけじゃなく、会社全体や社員の未来を考えるようになると、自然と覚悟が生まれてくるんです。
“コミュ力だけじゃない” 社長が本音で答えるリアル就活相談

ここまでお話を聞いてきて、ますます営業の仕事に興味が湧いてきたんですが……やっぱり営業って「コミュ力命」みたいなイメージがあります。正直、話すのが得意じゃないと難しいですか?
そんなことはないですよ。確かに、話し上手な人もいます。でも、私が見てきた中で結果を出している人は、必ずしも“おしゃべりが得意な人”ではなくて、“誠実に向き合える人”です。
誠実に向き合える人…?
そう。どれだけ話が上手でも、言ってることとやってることが違っていたら、お客様はそれも感じられます。逆に、うまく話せなくても一生懸命さや熱意があれば、信頼してもらえる。だから「コミュ力がないから向いてない」と思わなくていいんです。
それを聞いて少し安心しました。ちなみに、学生時代の経験で、仕事に活きたなと思うことってありますか?
私は学生時代、接客業のアルバイトを3年ほど続けていました。お客様の様子を瞬時に読み取って、臨機応変に対応する力は、営業の場でもとても役立っています。
接客って、やっぱり経験を積むほど成長できるんですね。
そうなんです。最初は大変でしたけど、どうしたらお客様に喜んでもらえるかを考えるようになってから、仕事がどんどん面白くなってきました。それって、まさに営業の基本と同じなんですよ。たとえアルバイトでも、自分なりに工夫して働く経験は、きっと将来の力になります。
今、自分がやっているバイトも、見方を変えれば全部つながってるんですね。
私は今バイト先で後輩の指導をすることがあるんですが、正直ちょっと苦手で…。注意するとすぐ落ち込まれたりして、「どう言えばよかったんだろう」って悩むことが多くて。
あるあるですね(笑)。怒られることに慣れていない人もいますから、言い方ひとつで受け取り方が大きく変わる。だから大事なのは、「なぜその指摘をしているか」を丁寧に伝えることです。
「理由を伝える」って意外と忘れがちかもしれないです…。
そうでしょう? ルールだから、では伝わらない。「お客様に迷惑がかかるから」「チームで動いているから」といった背景を伝えると、相手も理解しやすくなります。最初は教える、でもその後は考えさせる。このバランスが大切ですね。
なるほど…社会に出ても、指導とか後輩育成って避けられないですもんね。今のうちから少しずつ意識しておきたいです。
そうですね。上に立つということは、相手の立場に立って考える力を育てることでもありますから、今の経験はきっと役に立ちますよ。
スキーにサーフィン!?仕事も人生も楽しむ社長の素顔
ここまで聞いてきて、社長ってすごく“仕事人”な印象があるんですけど、普段のお休みはどう過ごされてるんですか?
実は、結構アクティブなんですよ(笑)。冬はスキー、夏はサーフィン。あまり人がやらない組み合わせかもしれませんが、どちらも長年続けてる趣味ですね。
え、サーフィンもされるんですか?すごく意外です!
波がいいと聞いたら宮崎まで行くこともありますよ。特に宮崎は地形的に波がきれいに立つので、初心者にも上級者にも人気なんです。自然の中で過ごすと、仕事とは違う視点でリフレッシュできます。
スキーもサーフィンも、切り替えがしっかりしてる感じがしていいですね。
ありがとうございます。実は昔、スキー中に大ケガをしてしまって…。そのときはしばらく動けなくなって、本当にいろんなことを考えました。でもその経験も、自分の人生を見つめ直すきっかけになったと思います。
そんな経験があっても、また自然と向き合う時間を大切にしているのが素敵です。
仕事も大事だけど、人生は一度きりですから。自分の「好き」を持っておくことも、長く働くうえではとても大切だと思います。
正解を探すな、自分で動け。“これからの社会人”へのメッセージ
ここまで本当にいろんなお話を聞かせていただきました。最後に、これから就職活動を始める学生たちに向けて、社長からメッセージをお願いできますか?
そうですね。まずは、「焦らなくていい」ということを伝えたいですね。今の学生さんって、情報が多すぎて、周りと比べて落ち込んだり、出遅れてるように感じたりすることが多いと思うんです。でも、就活って誰かと競争するものじゃなくて、自分の軸を探す旅みたいなものです。ちゃんと自分のペースで向き合えばいい。
たしかに、SNSとかで「もう内定出た」とか見ると、ちょっと焦っちゃいます。
ありますよね。でも、それで自分を見失ってしまうのはもったいない。せっかくの就活ですから、いろんな人に会って、いろんな価値観に触れて、「自分はどう生きたいか」を考える機会にしてほしいなと思います。
社長は就活生だった頃、自分の将来ってどう描いていましたか?
正直、まったく描けてなかったですね(笑)。「とにかく人と関わる仕事がしたい」というふんわりしたイメージしかなかった。でも、だからこそいろんな会社を見に行って、「この人たちと働いてみたい」と思えた場所を選びました。結果的に、それが今につながっていると思います。
“どんな仕事か”よりも“どんな人と働くか”を大事にしていたんですね。
そうです。もちろん仕事内容も大事だけど、結局は「誰と一緒に働くか」が一番自分を成長させてくれる要素になると思います。だから就活では、企業の説明会や面接で出会う“人”をちゃんと見てほしいですね。
なるほど…人との出会いを、自分の成長のきっかけにするっていう考え方、すごく素敵です。
仕事を通じて成長していくというのは、決して特別なことじゃありません。若いうちは何もわからなくて当たり前。大切なのは、失敗してもへこたれず、チャレンジし続けること。どんなに小さくても、自分で考えて動いた経験は、確実に自分の力になります。
確かに、今のうちにもっと挑戦しておかないとなって思いました。
私が営業を始めたころも、うまくいかないことだらけでしたよ。でも、お客様とちゃんと向き合って、信頼を得られた瞬間って、何より嬉しいんです。そういう一つひとつの積み重ねが、キャリアを築いていくんだと思います。
就活って、自分の未来に踏み出す第一歩なんですね。
まさにそうです。就活は「人生のすべてを決めるもの」じゃなくて、「これからの人生をどうつくっていくかの始まり」。だから、恐れずに、自分に正直に選んでください。私たちも、皆さんの挑戦を歓迎していますよ。
今回のインタビューを通して、「住宅営業」という仕事の見え方が大きく変わったという学生も多いのではないでしょうか。
“家を売る”のではなく、“人生に寄り添い、信頼を重ねる”。そこにこそ、この仕事の本当の価値があるのだと、乙吉社長の言葉から強く感じました。
どんな仕事に就くとしても、誠実さや情熱を持って人と向き合う姿勢は変わらず大切なもの。
自分の未来に迷ったときは、今回のような対話から、自分なりのヒントを見つけてみてください。