
脱・安さ至上主義 人手不足が示す新時代の入口
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引っ越し代金から見える、労働市場の変化
新居に移るとき、どうしても避けられないのが引っ越し代です。最近、見積もりを取ったら「20万円オーバー」という数字に驚いてしまった――そんな話があちこちで上がってきているそうです。どうやら、単なる季節的な値上がりではなく、「人手不足」という深刻な理由が背景にあるようです。
記事によると、大手の引っ越し業者は正社員の賃金を7%も引き上げたり、24年3月の引っ越し料金が前年比で8%上昇していたりと、価格転嫁が当たり前になりつつあるそうです。いまや、「仕事を頼みたい企業」は人材確保のために賃上げをせざるを得ない時代。実際に、繁忙期の受注制限や初任給30万円以上の提示など、「もう人がいなければ事業が回らない」という現実が突きつけられています。
専門用語をかみ砕こう
ここでは、記事内で気になった言葉を2つほど取り上げ、ざっくりと解説してみましょう。
雇用人員判断指数(DI)
日銀短観で公表される指数の一つで、簡単にいうと「企業がどれだけ人手を必要としているか」を測る指標です。プラスが大きいほど「もっと人がほしい!」という状況で、マイナスになると「人が余っている」ということ。この指数がバブル期並みに高いというのは、今がまさに“歴史的”な人手不足であることを意味します。
エンゲージメント
企業のなかで使われる「社員の愛社精神」や「組織への思い入れ」を示す言葉です。給料や待遇と深く結びついていて、「この会社で力を尽くしたい」「一緒に成長したい」という気持ちが高いほどエンゲージメントが高いとされます。人手不足の時代は、このエンゲージメントを高めるために、企業も給与や労働環境の見直しに本腰を入れています。
「安いほど良い」時代からのシフト
過去30年ほどのデフレ下では、「原材料が上がっても人件費を抑え、価格は据え置く」が当たり前でした。その結果、多くの企業が“安さ”を武器に生き延びてきたわけです。ところが、ここにきて急激に需要が高まる一方、働き手は限られている。余剰労働力の少なさは、企業にとって価格転嫁なしにはやっていけない状況をもたらしました。
さらに、部品メーカーへのコスト転嫁を認める大手自動車メーカーの動きや、警備サービスでの賃上げ転嫁など、いまや「コスト上昇分の価格への反映」が不自然ではなくなりつつあります。つまり、「我慢でしのぐ」やり方が通じない時代へ本格的に突入しているのです。
賃上げと構造改革の接点
人材不足やコスト高騰は、企業にとって痛手かもしれません。でも、一方で考え方を変えれば、「みんながしっかり稼ぐための仕組みづくり」がようやく動き出したともいえます。たとえば、大手の警備会社が「AIを搭載した警備ロボット」や「不審者を追うドローン」などを導入して人手を補う試みを進めたり、企業が若手に投資して高いスキルを育てることによって生産性を上げる道を探ったり。
「高い賃金」「安定した雇用」「価格を正しく反映する市場」という3つの要素がしっかりと噛み合えば、企業も成長し、人も生活を潤せる好循環が生まれます。このサイクルをうまく回していくためには、人材教育とデジタル技術の導入が欠かせません。安売り一辺倒の時代から、品質や働く人の価値をきちんと認め合う時代へ――それは、なんだか「ほんとうの豊かさ」について考えるチャンスなのかもしれません。
人が育って、企業も育って、社会が回っていく。この当たり前のことを、“安さ”を言い訳にずっと押し殺してきたのが、これまでの「デフレ経済」だった気がします。でももう、それは卒業。人手不足の波は、価値観の転換をはっきりと告げています。企業も消費者も、まるごと日本全体が、新しい一歩を踏み出すときが来ている――そんな時代の入り口に、私たちは立っているようです。

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