1.はじめに
介護や福祉の分野で、認知症ケアに特化した取り組みを続けている会社があります。
株式会社プロデュース――北九州市を拠点にグループホームやデイサービスを運営し、今年で創業25周年を迎えます。
「実は、最初はカラオケ機材を飲食店に貸し出す仕事から始めたんです。」
そう語る代表の中原亜希子さんは、異業種から介護の世界へ飛び込み、挑戦を続けてきました。
現在はシニア世代や子育て中のスタッフ、外国籍の社員など、多様な人が支え合いながら働く環境を整備。
「やりたいことは口に出したほうがいい」という前向きな姿勢で、社員にも新しい挑戦を後押ししています。
就活生のみなさんにとっても、キャリアを考えるヒントがたくさん詰まったお話を伺いました。
2. 「カラオケから介護へ」異色のキャリア
本日はよろしくお願いいたします。最初に社長のご経歴を拝見して驚いたのですが、起業当初はカラオケ機器のレンタル事業をされていたんですよね?
そうなんです。29歳のときに起業して、最初はカラオケ機器のレンタルをしていました。当時はカラオケがすごく流行っていて、需要があったんですよ。
今の介護事業とは全然違う分野ですね。その後、どのようなきっかけで介護に進まれたんですか?
大手のカラオケボックスが直営化する流れが強くなって、私のようなディーラー業はだんだん厳しくなっていったんです。それで「次に何をするか」を考えていたときに、ちょうど介護保険制度が始まったんですよね。
なるほど。そこで介護に関心を持たれたんですね。
毎月安定して収入が入る仕組みだという点にも魅力を感じましたし、やってみようと決めました。最初は福祉用具のレンタルから始めて、そこから住宅改修や手すりの取り付けなどへ広げていったんです。
思い切った決断をされたんですね。
そうですね。方向転換は早かったと思います。でも、今振り返ってもあの時の決断は大きかったですね。
3. “尊厳を守る介護”への思い
介護の事業を始められてからは、どのように進めていかれたんですか?
最初は小さな規模で、私自身も現場に入りながら全部やっていました。社長業も、給料計算も、買い物も、現場でのケアも。プレイングマネージャーのような形ですね。
それは大変だったのではないですか?
そうですね。本当に忙しかったんですけど、「自分がやりたいことをやれている」という充実感がありました。あの9年間はとても幸せな時間でした。
グループホームという形を選ばれたのはなぜですか?
当時は、認知症の方が家族から隠されてしまったり、社会から距離を置かれてしまうことも多かったんです。私はそれを見て、「もっと家族のように温かい場所が必要だ」と思いました。そこで“大家族のような雰囲気”を大事にしたグループホームを立ち上げたんです。
本当に家庭の延長のような場所をつくりたかったんですね。
はい。最期のときまで人として尊重され、安心して過ごせる。そんな環境を目指しました。
4. 「認知症ケアならプロデュース」へと成長
介護事業を続けていく中で、「認知症ケア」に特化されたと伺いました。それはなぜですか?
日本の高齢化はどんどん進んでいて、認知症の方が増えるのは明らかでした。だからこそ私たちは、あえてその分野に集中することにしたんです。
でも、認知症のケアってとても大変そうなイメージがあります。
そうですね。他の施設では受け入れが難しい方もいらっしゃいます。正直に言うと、最初の1〜2か月は現場も大変なんです。スタッフから「社長は言うのは簡単ですけど、対応するのは私たちなんですよ」と言われたこともありました。
確かに現場の方は大変ですよね。どうやって乗り越えてこられたんですか?
私が意識しているのは、「なぜこの仕事をしているのか」という理念を常に共有することです。困難に向き合う意味をみんなで確認し合うことで、達成感ややりがいにつながります。少しずつご本人のことが理解できるようになって、穏やかに過ごせるようになる。その瞬間をスタッフと一緒に喜べるのが大きいんです。
なるほど。“大変さの先にあるやりがい”を共有していくことが大切なんですね。
はい。その積み重ねで、「認知症ケアならプロデュース」と言われるようになってきました。
5. 多様性を支える仕組みと“笑顔の循環”
取材していて一番驚いたのは、本当に色々な方が一緒に働いていらっしゃることです。シニアの方や子育て中の方、外国籍の方まで…。どうしてここまで多様な人が集まっているんでしょうか?
もともと人手不足という課題がありました。でも私は「どんな人でも力を発揮できる会社にしたい」と思っていたんです。そこで定年を71歳に引き上げたり、子連れ出勤を認めたり、外国人技能実習生を受け入れたりと、少しずつ仕組みを整えてきました。
なるほど。新しい取り組みには反対意見もあったのではないですか?
もちろん最初はありましたよ。子連れ出勤を始めたときは「仕事の場に子どもを連れてくるなんて」と言う声もありました。でも私は「0歳から100歳まで一緒に過ごせる会社をつくりたい」と思っていましたし、粘り強く伝えていくうちに自然に受け入れられるようになりました。
社員の方同士で支え合っている雰囲気も強いですよね。
ええ。例えば、ダウン症のお子さんを育てているお母さんが、朝だけ働いて昼は子どものケアをして、夜にまた数時間勤務する、という働き方もあります。みんなでシフトを調整し合うのが普通になっているんです。急な休みも「お互いさま」と受け止められる。そういう環境だからこそ、人手不足の時代でも人が集まってきてくれるのだと思います。
だからここでは“笑顔の循環”が生まれているんですね。
そうです。社員が安心して働けるから利用者の方への対応も丁寧になる。その笑顔が利用者のご家族に伝わり、また私たちにも返ってくる。そういう循環を大切にしています。
6. 就活生へのメッセージ:やりたいことは口に出す
社長がここまで事業を広げてこられた背景には、どんな考え方があったのでしょうか。
私は昔から「やりたいことは言葉にして周りに伝える」ようにしてきました。最初にグループホームをやりたいと口に出していたからこそ、建設会社の社長と偶然出会ってチャンスをいただけたんです。
まだ自信がないときでも、口に出したほうがいいんですか?
絶対に言ったほうがいいです!「なりたい自分になったつもりで話すといい」と教わって、私も実践してきました。言葉にしているうちに脳がその方向に働いて、自然と自信もついてきますよ。
失敗したら怖い、と思う学生も多いと思います。そのことについてはどう考えていますか?
私は「失敗したらすぐ改善すればいい」と考えています。問題が起きても落ち込まずに、次の一手を早く打つ。そうやって意思決定を続けてきました。だからあまりネガティブになることはないですね。
なるほど。挑戦する勇気が大切なんですね。
そうです。若いうちはたくさん挑戦して、選択肢を広げてください。年齢を重ねると、自分の強みやできることが見えてきます。そのときにどんな経験をしてきたかが必ず活きてきますよ。
7. おわりに
カラオケ機器のレンタル業からスタートし、現在は「認知症ケアならプロデュース」と言われるまでに成長した株式会社プロデュース。そこには、中原社長の「やりたいことは口に出す」「失敗しても改善すればいい」という前向きな姿勢と、多様な人材を受け入れながら一緒に成長していこうとする組織づくりがありました。
人口減少や人手不足といった社会課題が深刻化する中でも、誰もが安心して働き、利用者や家族が笑顔で過ごせる仕組みをつくること。それこそがプロデュースの強みであり、今後も大切にしていく価値観です。
25周年を迎えたプロデュースは、これからも“誰もが活躍できる場所”をつくっていくはずです。その歩みは、就活生にとっても未来を考える大きなきっかけになるのではないでしょうか。