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サンリブの挑戦:地域密着型SDGsの未来を切り拓く | 福岡県で就活・転職に役立つ情報満載Vamos (バモス)
サンリブの挑戦:地域密着型SDGsの未来を切り拓く 
2024/09/19

サンリブの挑戦:地域密着型SDGsの未来を切り拓く 

北九州を代表するスーパーマーケット「サンリブ」。創業以来、地域に根ざした経営を続けてきた同社が今、SDGsへの取り組みを本格化させています。 リクルートWebマガジンVamos(バモス)は、北九州市立大学、眞鍋ゼミの学生たちと共に、サンリブのSDGs推進担当の中澤さんにインタビュー。サンリブとして、いかに持続可能な社会の実現に貢献しているのか、その取り組みの詳細と課題、そして今後の展望について深く掘り下げました。 「感謝と奉仕」を経営理念に掲げ、常に地域社会の発展に貢献することを目指してきたサンリブがSDGsという新たな課題にどのように向き合っているのか。CO2削減、食品ロス削減、プラスチック削減という3つの柱を中心に展開される同社のSDGs戦略。その具体的な取り組みと、直面する課題、そして未来への展望について聞いてみたいと思います。 

株式会社サンリブ

SDGs推進チーム 中澤さん

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北九州市立大学 地域創生学群 学生リポーター

地域密着型のSDGs戦略 

サンリブのSDGsの取り組みについて、基本的な方針をお聞かせください。

私たちは、CO2削減、食品ロス削減、プラスチック削減の3つの削減を最優先課題としています。これらは、スーパーマーケットとして、お客様に馴染みのある課題であり、同時に社会課題の解決と事業の発展を両立させることができる領域だと考えています。

具体的にどのような活動を行っているのでしょうか? 

例えば、CO2削減では太陽光発電の導入を進めています。これにより環境負荷を減らすと同時に、電気代というコスト削減にもつながります。食品ロス削減では、フォーアスというゼロ・ウェイストスーパーで、食材をロスなく使い切るため、惣菜や保存食に加工するなど、食品ロスをなくす工夫を行なっています。 

プラスチック削減への挑戦:木製スプーンの導入 

プラスチック削減の取り組みについて、詳しくお聞かせください。 

2年前から、デザート用スプーンを木製に切り替えました。これは、2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法、いわゆるプラ新法への対応でもあります。安全性と環境への配慮を両立させるため、計画的に植林された木材を使用し、口に入れても安全な加工を施したスプーンを選びました。 

木製スプーンの導入って私たち学生が思っている以上に難しいものなのでしょうか? 

大きな課題がありましたよ。お客様の口に入るものなので、まず安全性を最優先しました。その結果、高品質な木製スプーンを選んだため、コストが大幅に上がってしまいました。さらに、素材が木製に変わりプラスチック削減には繋がりましたが、お客様にご提供する量は大きく変わっていないので、ごみの排出量は減っていません。

年間でどれくらいのスプーンを使用しているのでしょうか? 

驚くかもしれませんが、サンリブ全体で年間100万本以上のデザート用スプーンを使用しています。これだけの量のプラスチックごみが出ていたことになりますね。

紙スプーンへの切り替えは検討されなかったのでしょうか? 

紙スプーンも検討しましたが、強度や使い心地の面で課題がありました。お客様の満足度を維持しながら環境負荷を減らすという観点から、木製スプーンを選択しました。

SDGsメモ

プラスチック削減は、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」と目標14「海の豊かさを守ろう」に直接関連する重要な取り組みです。木製スプーンの導入は、再生可能資源の利用促進にもつながる好例と言えるでしょう。一方で、コスト増や使用量管理の難しさなど、実務上の課題も浮き彫りになっています。  

移動販売車「とくし丸」:買い物弱者を救う取り組み 

移動販売車『とくし丸』について教えてください。 

『とくし丸』は、買い物弱者の支援と高齢者の見守りを主な目的とした移動スーパーです。週に2回程度、各地域を巡回しています。この事業には3つの目的があります。1つ目は命を守ること。買い物弱者の支援と高齢者の見守りです。2つ目は食を守ること。地域スーパーとしての役割を維持することです。3つ目は職を作ること。社会貢献型の雇用を創出することです。 

具体的にどのような活動を行っているのでしょうか?

例えば、いつも買いに出て来てくださるお客様が普段の時間に出てこられないと、自宅に様子を見に行くこともあります。実際に命を救った事例もあるんです。また、地域のニーズに応じて柔軟に対応しています。暑い日にはカットスイカを追加で積み込んだり、お客様の要望に応じて次回訪問時に特定の商品を用意したりしています。 

北九州ではどの地域で活動しているのでしょうか? 

各店舗に紐づいて活動しています。主に小倉や戸畑、八幡などの地域で、特に山間部や高齢者が歩いてスーパーに行くには不便な場所を中心に巡回しています。ただ、意外にも街中でも需要があり、お客様に喜ばれています。 

SDGsメモ

「とくし丸」の取り組みは、SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」に大きく貢献しています。高齢化社会における地域コミュニティの維持と、誰一人取り残さない社会の実現に向けた具体的な行動と言えるでしょう。また、目標3「すべての人に健康と福祉を」の観点からも、高齢者の健康と福祉に寄与する重要な取り組みです。 

ゼロ・ウェイストへの挑戦:「フォーアス」の取り組み 

ゼロ・ウェイストスーパーマーケット『フォーアス』について教えてください。 

フォーアスは、ごみをできる限り出さないことをコンセプトにしたスーパーマーケットです。その手段として量り売りを中心に展開しています。例えば、野菜や果物は包装せずに販売し、お客様が必要な分だけ購入できるようにしています。納豆や豆腐なども量り売りで提供しています。 

食品ロス削減の取り組みはどのようなものがありますか? 

販売には適さない食材は、併設しているカフェのカフェメニューやテイクアウトのお惣菜にしています。

お客様の反応はいかがですか?

予想外だったのは、環境意識の高いと言われている若年層よりも、高齢者の方々に好評だったことです。昔ながらの量り売りを懐かしく感じる方が多かったようですね。特に一人暮らしの高齢者にとっては、必要な分だけ購入できることも大きなメリットになっています。 

フォーアスの取り組みをもっと広げていく予定はありますか?

はい、2024年3月に大分県のサンリブBUONO(ブオノ)萩原店にフォーアスのコーナーを設置しました。ただ、商売としてはまだ課題も多いのが現状です。しかし、お客様の意識を変え、社会を変えていくためにも、このような取り組みは重要だと考えています。 

SDGsメモ

フォーアスの取り組みは、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」の模範的な実践例と言えます。食品ロスの削減、包装材の削減、そして循環型経済の構築に至るまで、包括的なアプローチを採用している点が注目に値します。また、目標11「住み続けられるまちづくりを」の観点からも、高齢者や単身世帯にとって利便性の高い買い物環境を提供している点で評価できるでしょう。 

食品ロス削減とフードドライブの取り組み 

フードドライブの活動についても教えてください。

食品ロス削減の取り組みの1つとして、フードドライブ活動を行っています。昨年は約2トンの食品を集め、様々な団体に寄付しました。今後はさらに展開する店舗を増やし、活動を広げていく予定です。 

フードドライブを実施する上での課題はありますか? 

これもいくつか課題があります。寄付された食品の安全性の確保や、当社から寄付先への運搬などに大きな課題があります。これらの課題を解決するため、行政や寄付先のフードバンク団体様など、ステークホルダーと連携しながら効率的な仕組みづくりを検討しています。

SDGsメモ

フードドライブの取り組みは、SDGs目標2「飢餓をゼロに」と目標12「つくる責任 つかう責任」に直接的に貢献しています。食品ロスを削減しながら、食料支援を必要とする人々へ食品を届けるという点で、社会的にも環境的にも大きな意義があります。一方で、食品の安全性確保や物流の効率化など、実施上の課題も多く、これらを解決していくことが今後の課題となっています。

従業員教育とSDGsの社内浸透 

SDGsの取り組みについて、従業員の方々にはどのように教育を行っているのでしょうか?

従業員全員に直接説明するのは難しいので、各店舗の責任者に伝え、責任者から従業員に伝達する方式を採用しています。定期で実施している店長向け会議等で取り組みの内容を説明し、社内掲示板や広報を通じて情報を共有しています。 

具体的にはどのような内容を伝えているのでしょうか? 

例えば、SDGsの基本的な考え方や、私たちが取り組んでいる具体的な活動内容を説明しています。また、地域の自治体やお取引先とのパートナーシップを活かし、担当者を招いて、従業員向けの講演を行ったこともあります。これにより、従業員がSDGsについて理解し、日常業務に反映できるようにしています。 

従業員さんの反応はいかがですか? 

最初は戸惑いもありましたが、徐々に理解が深まり、積極的に取り組む姿勢が見られるようになりました。特に、日常業務に直結する取り組みについては、従業員からも多くの意見や提案が寄せられています。 

SDGsメモ

従業員教育は、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」と目標8「働きがいも経済成長も」に関連しています。従業員がSDGsについて理解し、実践することで、企業全体の持続可能性が向上します。また、従業員の意識向上は、企業の競争力強化にもつながります。 

課題と展望 

SDGsの取り組みにおける課題は何ですか?

女性の活躍推進や、取り組みの社内浸透にはまだ課題があります。また、これらの活動をいかにしてお客様に伝えていくかも重要なポイントです。地域の自治体やお取引先などの連携も積極的に進めています。

具体的にはどのような課題があるのでしょうか? 

例えば、女性の活躍推進については、女性管理職の割合を増やすための取り組みなどを進めていますが、まだ不十分だと思います。また、SDGsの取り組みをお客様に理解してもらうための広報活動も課題です。SNSを活用して情報発信を強化していますが、まだ十分ではありません。 

今後の展望について教えてください。

今後は、さらに多くの店舗でSDGsの取り組みを展開し、地域社会に貢献していきたいと考えています。特に、食品ロス削減やプラスチック削減については、新しい技術やアイデアを取り入れていきたいと考えています。 

最後に、SDGsに取り組む上で大切にしていることは何ですか?

私たちが最も大切にしているのは、『地域と共に成長する』という理念です。SDGsの取り組みも、単に企業の利益のためではなく、地域社会の持続可能な発展に貢献することを目指しています。そのためには、お客様や地域の方々との対話を大切にし、常に新しいアイデアや改善点を探っていくことが重要だと考えています。また、社員一人ひとりがSDGsの意義を理解し、日々の業務の中で実践していくことも欠かせません。これからも、地域に根ざした企業として、持続可能な社会の実現に向けて努力を続けていきたいと思います。 

SDGsメモ

女性の活躍推進(SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」)や、行政やお取引先など、全てのステークホルダーとの(目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」)することで、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを加速させています。これにより、地域社会全体の発展に寄与し、誰もが安心して暮らせる環境を築くことを目指しています。具体的には、女性の管理職登用を積極的に進めるとともに、働きやすい職場環境の整備を行っています。また、地域の企業や自治体との連携を深め、共同でイベントやキャンペーンを実施することで、SDGsの認知度向上と実践を促進しています。

まとめ 

サンリブのSDGs戦略は、地域に根ざした企業だからこそ実現できるきめ細やかな取り組みが光っていました。環境負荷の低減や地域コミュニティの維持といった広範な課題に対して、真摯に向き合う姿勢が非常に印象的です。これらの取り組みをさらに拡大し、社会全体の変革につなげていくことが重要だと感じました。サンリブの挑戦は、持続可能な社会の実現に向けた新しい可能性を示しており、企業と地域社会が一体となって課題解決に取り組むことの重要性を教えてくれます。SDGsの達成は一朝一夕には成し遂げられない大きな目標ですが、サンリブのような企業が一つひとつ着実に取り組みを進めることで、持続可能な社会への道が開けるのではないでしょうか。私たち一人ひとりも、日々の生活や買い物の中でこうした取り組みに協力し、共に前進していくことが求められていると強く感じました。 

取材協力:
SDGs推進チーム 中澤さん
株式会社サンリブ
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