リクルートWebマガジンでは今回、九州機電株式会社に学生リポーターたちが西賀社長にインタビューを行いました。創業93年の歴史を誇る九州機電は、卸売業を基盤としながらも、工場設備やビル設備、太陽光発電、電動工具など、多岐にわたる事業を展開する企業です。BtoBを中心にしながらも、家庭用製品の提供にも注力し、技術力と営業力を活かして高度なサービスを提供しています。また、社員の幸福を経営理念に掲げ、資格取得支援や充実した福利厚生制度を通じて、社員の成長と満足度を高めています。九州機電の魅力を詳しくお伝えします。
九州機電株式会社
代表取締役 西賀 社長
九州機電の創業と成長の歩み
今日はお時間ありがとうございます。九州機電の歴史などについてお話いただけますか?
九州機電の創業は昭和6年に遡り、創業者は私の曾祖父の弟になります。現在で93年の歴史を持つ会社となっています。
創業当初、九州機電は門司港で事業をスタートさせました。当時、門司港は博多以上に繁栄を見せていた貿易港であり、その地でカーバイド(炭化カルシウム)を取り扱う会社として設立されました。カーバイドは水と反応してアセチレンガスを発生させる鉱物で、溶接ガスとして使用されています。
創業から2年後には、九州機電は日立製作所の特約店となり、日立製品の取り扱いを開始しました。これに伴い、事業拠点を門司港から小倉に移し、さらにその後、私の父が昭和30年に入社しました。当時、日立の産業機械だけでなく、家電製品も扱っていました。
その後、家電部門と産業用機械部門を分けるという決断を下しました。父は産業用機械部門を担当し、「原田機電」という新たな会社を設立しました。そして、昭和47年には、戦後に設立された別の特約店と原田機電が合併し、「九州機電」として新たなスタートを切りました。
合併後、会社は小倉北区の富野に移転しましたが、バブル期には家賃の上昇もあり、日立グループの日立物流と相談し、現在の西港町に移転することを決定しました。この地は日立産機システムのサービスステーションと分け合って入手し、平成元年に移転が完了しました。
私自身は他社で働いていましたが、父親の後を継ぐために平成6年に帰郷し、現在に至ります。
多岐にわたる事業展開と強み
93年の歴史になるんですね。事業内容はどういったものでしょうか?
九州機電は、創業当初から現在に至るまで「卸売業」として事業を展開してきました。特に日立製作所の特約店として、多岐にわたる製品を取り扱ってきました。街中には数多くの機械工具商社や金物商社が存在していますが、九州機電はそうした販売店に製品を卸すビジネスを主に行ってきました。卸売業として、現在も幅広い商品ラインナップを取り揃えています。
その中でも九州機電の事業の柱のひとつは、工場設備の提供です。一例を挙げると工場内で使用される高圧受変電設備があります。工場では、家庭用の何十倍、何百倍という高圧電力を電柱から引き込み、それを変圧器を通じて各所に供給する必要があります。九州機電は、このような電力インフラの構築に関する設備を提供し、工場の効率的な運営を支えています。
さらに、工場内の設備として、天井に設置されたクレーンなどの重機も取り扱っています。これらの設備は、工場内での資材移動や製品の運搬に欠かせないものであり、九州機電はそうした重要なインフラを供給する役割を担っています。
卸売業だけでなく、工場設備や電力インフラの提供など、社会の基盤を支える重要な役割を果たしているんですね。工場運営に欠かせないインフラを提供していることは、会社の技術力と信頼性を感じます。
その他には「ビル設備」に関する事業も九州機電の重要な柱です。この分野では、空調機やエレベーター、エスカレーター、照明器具、そしてビル内で使用される水を送るポンプなど、多岐にわたる設備を提供しています。これらの設備は、ビル全体の快適さと機能性を維持するために欠かせないものであり、九州機電はその供給と保守を担っています。
また、環境問題への取り組みとして「太陽光発電」事業も展開しています。近年のカーボンニュートラルの動きに応じて、九州機電は京セラの技術代理店として太陽光発電設備を提供しています。16年前からこの分野に進出しました。これにより、持続可能なエネルギー供給の一端を担い、環境への貢献を続けています。
さらに、「電動工具」の販売にも力を入れています。かつては日立工機の製品を扱っていましたが、日立グループの再編によりアメリカのファンドに売却され、現在は「HiKOKI(ハイコーキ)」というブランドで展開しています。地元九州に本社を持つホームセンター、ナフコやグッデイ、ホームワイド(イオン九州)に電動工具を卸しており、全国規模での販売網を維持しています。
かなり幅広いですね!
現在の売上高の半分近くは工事関連の収益であり、実質的に建設業としての一面も持っています。このため、工事を含めた総合的なサービスを提供しています。
九州機電は、卸売業としての伝統を守りつつ、現代のニーズに合わせた多角的な事業展開を行いながら、 地域の産業基盤を支える重要な企業として事業を拡大しているんです。
様々な分野で活躍されているんですね。BtoBが事業の中心なのですね。
そうですね。BtoB事業が中心となっていますが、家庭でも使用される特定の機器に関しても積極的に取り扱っています。 例えば、家庭用のルームエアコン、IHクッキングヒーター、エコキュート(給湯器)などがその代表例です。これらの製品の卸売から設置工事まで一貫して対応しており、家庭向けの機器においても幅広いサービスを提供しています。 このように、九州機電は家庭向け製品においても専門性を発揮し、その分野での強みを活かしているんですよ。
幅広い製品を扱われていますが、どのように販売していくのでしょうか?
九州機電の営業スタッフは、さまざまな方法で製品を販売しているんです。たとえば、TOTOや日産自動車などの大手メーカーの工場に直接製品を提供することもあれば、販売店に商品を卸すこともあります。このように、販売の仕方がいろいろあるため、会社では営業部門をいくつかに分け、それぞれが専門分野に特化して活動しています。
これによって、九州機電はお客様のさまざまなニーズに柔軟に対応できるようになっています。幅広い電機関連のサービスを提供することが、私たちの大きな強みとなっています。
家庭向けの製品にも強みを持っているのは、九州機電の柔軟性と多様性を感じますね。BtoB事業が中心とはいえ、家庭向けのルームエアコンやIHクッキングヒーターなど、私たちの日常生活に欠かせない製品も取り扱っているのは驚きです。また、その設置工事まで対応しているというのは、お客様の生活全体を支えているという印象を受けました。
技術力と営業力が支える事業の柱
九州機電には、営業スタッフだけでなく、技術スタッフも多く在籍しており、特に空調設備に関する技術力が強みとなっています。この技術スタッフたちは、主に業務用の空調設備を担当しており、新しいビルが建設される際には、図面を基に最適な空調システムを設計します。
空調システムの設計には高度な技術が求められます。たとえば、どのサイズのエアコンをどの位置に配置すれば効率的か、必要な配管や電線の量はどれくらいかなどを計算しなければなりません。このような作業には、国家資格である「管工事施工管理技士」を持つ技術者が関わっています。彼らは、少ない機器で最大限の効果を発揮するように、最適な配置や設計を行うノウハウを持っています。
その他にも、管理・経営に携わるスタッフもいます。彼らは営業、技術、そして管理の各分野で会社全体を円滑に運営するための役割を担っています。これらのスタッフが協力し合い、営業活動から技術サポート、メンテナンスまで幅広く対応することできています。
ビル建設において非常に重要な役割を果たしているんですね。空調システムの設計には高度な技術が必要だというお話を聞いて、まさに社員一人ひとりの技術力が会社全体の強みとなっていると感じました。技術スタッフの方々は理系出身の方ばかりですか?
技術スタッフが全員理系出身というわけではないですよ。文系出身者でも技術部門で活躍している社員がいますし、逆に理系出身者が営業を担当することもあります。つまり、文系・理系という学歴にとらわれることなく、社員一人ひとりの能力や意欲が尊重されています。私自身も文系出身ですが、会社の中で求められる国家資格である「1級管工事施工管理技士」を取得しています。この資格は難易度が高く、合格するためにかなり頑張りました。
実は、九州機電では、社員の資格取得を積極的に支援する体制が整っています。社内では「取得推奨資格リスト」を公開し、社員がどの資格を目指すべきかを明確にしています。さらに、重要な資格については会社が受験料を負担し、重要な資格の取得者には毎月の給料に1万円が加算されるというインセンティブも提供しています。この1万円の増額は資格を取得した月だけでなく、継続的に支払われるため、社員にとって非常に大きなメリットだと思います。
このような制度は、単なる一時的な報酬ではなく、資格を持つことの価値を社員が日々実感できるようにという想いからつくりました。資格取得に対するモチベーションを高めることで、社員の技術力向上を図り、ひいては会社全体の競争力を強化することが目的です。
現在、九州機電には22人の1級管工事施工管理技士が在籍しており、これは過去の状況と比べると大きな進展です。以前は資格取得者が片手で数えられるほど少なかった時期もありましたが、現在では多くの社員が自発的に資格取得に取り組んでいます。さらなる技術力向上を目指して社員を支援し続けていきたいと思っています。
社員の幸福を追求する経営理念と福利厚生
毎月1万円は嬉しいですね!社員の働きやすさやモチベーション向上のために、さまざまな福利厚生を用意されているんですか?
ユニークな制度としては、結婚祝金ですね。かつては結婚祝金として5万円が支給されていましたが、少子化対策としてこの金額を大幅に引き上げようと考えたんです。結婚する社員をもっと支援するために、結婚祝金を100万円に増額したんです。
100万円⁉︎ちょっと学生の私たちからは想像できない金額です。
この結婚祝金制度は、社内結婚の場合には200万円が支給するというさらに手厚い内容になっています。社内結婚で200万円が支給された例はまだありませんが、これまでに100万円の結婚祝い金を受け取った社員は16人にのぼります。
オフィス環境についても力を入れていて、オフィスはワンフロアのオープンなスペースになっています。社員が自由に座る場所を選べるフリーアドレス制を導入しているんです。これは、今年の4月にオフィスを改装した際に新たに取り入れたもので、営業や現場で外出が多い社員にも柔軟な働き方を提供しています。また、セキュリティー強化のために、日立の指静脈認証システムを導入し、社員の安全とオフィスセキュリティーも徹底されています。
これらの福利厚生制度は、働きやすい環境の提供や、社員一人ひとりの生活の質を高めることを目指しています。
これだけの福利厚生があることは嬉しいですね。
九州機電の経営理念は「社員およびわが社に関わるすべての人々の幸福を実現する」というものです。この理念に基づき、社員を大切にしつつも、同時に厳しさも求めるというバランスを重視しています。しっかりとやるべきことをやることが重要だと考えています。
この理念が組織に浸透することで社員への福利厚生などが準備できるわけです。
社長が語る、困難を乗り越えるマインドセット
結果が福利厚生として返ってくることはやりがいにもなりますね。ところで、社長の就活や新社会人としての経験を聞かせていただけますか?
就職活動では、もともと人に喜んでもらうことが好きだったので、テレビで見たドキュメンタリーに感銘を受け、発展途上国のインフラ整備に関わる仕事に興味を持ったんです。その影響で、総合商社やゼネコンという業界に絞って就職活動を進めました。そして、最初に内定をもらったゼネコンに入社を決めましたが、その会社でのキャリアはわずか3年半で終わりました。
社会人として働き始めた頃、その会社は非常に順調に成長しており、スーパーゼネコンと呼ばれる大手5社に次ぐ地位を目指していました。私自身もその成長の一部として、やりがいを感じながら働いていました。しかし、入社して2年目か3年目の頃に、大きな事件が起こったのです。社長や会長が逮捕され、社内が大混乱になりました。これにより、会社は経営不振に陥り、社員数や売上高が大幅に減少しました。
この出来事は非常に衝撃的であり、会社経営の難しさと責任の重さを痛感させられました。特に、トップマネジメントの行動がいかに会社全体に影響を与えるかを目の当たりにしました。私たち社員は混乱の中で日々の業務を続けなければならず、多くの困難に直面しました。
おかげさまで、困難な状況においても冷静に対処する姿勢は身につけられたと思いますね。この経験を通じて、問題解決能力やストレス管理のスキルも向上しました。特に、どんなに困難な状況でも前向きに取り組む姿勢を大切にするようになりましたね。
そのような厳しい状況の中で、どのようにして冷静さを保ち、前向きに取り組む姿勢を身につけられたのでしょうか?また、その経験が現在の経営にどのように生かされているかについてお聞かせいただけますか?
厳しい状況に直面したとき、私が心がけたのは、まず感情に流されずに状況を冷静に分析することでした。混乱の中では、焦りや不安が先行しがちですが、冷静な判断をするためには、一歩引いて全体を見渡す視点が必要だと感じました。冷静さを保つために深呼吸をして心を落ち着け、問題の本質を見極める努力をしました。また、周囲の意見を聞きながら、どのように対応すべきかを慎重に考えることも大切でした。特に、経験豊富な同僚や信頼できる友人の意見は非常に参考になりました。
もうひとつ大切にしたのは、どんなに困難な状況でも『できること』に集中することです。できないことや解決が難しい問題に目を向けると気持ちが落ち込みがちですが、少しでも前進できることにフォーカスすることで、前向きな気持ちを保てました。たとえば、小さな成功を積み重ねることで自信を取り戻し、次のステップに進む力に変えていきました。
この経験は、現在の経営にも大きく生かされています。たとえば、会社が直面する困難や課題に対しても、感情的にならず冷静に対応することを常に意識しています。定期的なミーティングを通じて、社員と情報を共有し、問題解決に向けた具体的なアクションプランを立てることが重要です。また、社員にも同じように『できることに集中する』という姿勢を持ってもらうようにしています。これが、会社全体として前向きに取り組む姿勢を維持し、成長を続ける原動力になっていると感じています。具体的には、社員一人ひとりが自分の役割に自信を持ち、チーム全体が一丸となって目標に向かって進むことで、組織全体の士気も高まります。
まさに就活でも必要とされそうなマインドですね。私も『できること』に集中して前向きに取り組んでいきたいと思います。それでは、最後に今まさに就活を頑張っている学生たちに向けて一言お願いします。
就活は、人生の大きな転機であり、将来のキャリアを考える上で非常に重要な時間です。皆さんがこれからどのような道を歩むにしても、まずは自分自身をよく知ることが大切だと思います。自分の強みや弱み、興味のある分野や価値観をしっかりと理解することで、納得のいく選択ができるはずです。自己分析を通じて、自分が本当にやりたいことや、どのような職場環境で働きたいかを見極めることが、成功への第一歩となります。
また、就活中には不安やプレッシャーを感じることもあるでしょうが、私が学んだように『できること』に集中することを忘れないでください。すべてを完璧にする必要はありません。少しずつでも前進することで、自分に自信がつき、次のステップが見えてくるはずです。友人や家族、キャリアカウンセラーなど、周りの人々のサポートを受けながら、自分のペースで進めることが大切です。
最後に、どんな企業に入っても、そこがゴールではなくスタートです。新しい環境で何を学び、どう成長するかが大切です。新しい職場での経験や学びを通じて、自分自身をさらに成長させる機会と捉えてください。皆さんがこれからの就活でベストを尽くし、自分に合った道を見つけることを心から願っています。そして、どんな困難に直面しても、前向きな姿勢を持ち続けることが成功への鍵となります。応援しています。