「27卒」と呼ばれる皆さんは、まだ就職活動という言葉を実感としては持ちにくいかもしれません。けれども不思議なことに、ちょっと前まで「就活って3年生の後半からだよね?」なんていう雰囲気だったものが、いつの間にやら「大学1年生から情報収集しておかないと遅れるよ」といった空気感さえ漂うようになりました。いつからこんなに就職活動は、スピード感と先取り感に満ちてしまったのでしょう。
もちろん、そんな早期化の流れについて「それで本当にいいの?」と問いかけたくなる場面もあります。でも、現実は現実としてそこにある以上、「早めに動いた方が得をする」あるいは「早めに動いた方が楽になれる」ことはどうしても増えています。つまり、今の大学生が抱くべき発想のひとつは「先んじて世界を知る」ということ。その「世界」とは、ただ就活に限りません。企業のこと、社会のこと、大人たちの働き方や考え方、そういったものを早いうちから肌で感じ取ることが、どうしても大切になってきています。
「先んじて知る」といっても、むずかしく構える必要はありません。もっとカジュアルに、自分の目で見て、耳で聞いて、人と話して、そんな体験を通して「社会って何だろう?」と問い続けていく。その第一歩を、ぜひこのタイミングから踏み出してほしいのです。
就活が早まるからこそ、今やるべきこと
時代は移ろい、就活を取り巻く環境も、企業が発表するスケジュールも、年々早まる傾向にあります。「早めにインターンシップを経験しておかないと」「早めに自己分析を」「早めにES(エントリーシート)を書き始めないと」といった声があちらこちらから聞こえてくる。確かに、早く準備を始めれば始めるほど、あとで焦る場面は少なくなるかもしれません。
けれども、ここで私が提案したいのは、もっと根っこの部分で必要な「大局観」を身につけよう、ということです。大局観、つまり「あ、世の中ってこうなっているんだな」とか「企業ってこういう風にして利益を生み出しているんだな」「社会ってこんな流れの中にあるんだな」といった、全体像をなんとなくでもつかむこと。そのためには、何が必要でしょう? 本やネットの情報を読むことも大切ですが、やはり生身の「大人たち」に会い、直接話を聞くことが、とてつもなく大きいヒントになるのです。
大人に会う、大人と話すということ
「大人と話す」と聞くと、多くの学生は「え、なんか緊張する」「どんなふうに質問すればいいかわからない」「相手は忙しいんじゃないか」と及び腰になることが多いようです。確かに、大人といってもひとくくりにはできないし、いろいろなタイプの人がいる。業界も職種も、価値観も働き方も、千差万別です。
でも、だからこそ「いろんな大人と会う」ことが大事なのです。たとえば、あなたが新聞社で働いている記者さんに会って話を聞くと、「ニュースの裏側ってこうやって作られているのか!」と気づくかもしれない。あるいは、IT系のベンチャー企業の創業者に話を聞くと、「世の中を変えるって、案外こういう小さなきっかけから始まるんだな」と知るかもしれない。大手メーカーで研究開発をしているエンジニアに会えば、「技術って社会を支える静かな土台なんだ」とわかるかもしれない。
そうした気づきを「就活が始まってから」ではなく、「今」のうちに仕込んでおく。それは、まるで土に栄養を入れておくようなもの。肥えた土壌には豊かな作物が育つように、あなた自身の頭の中や価値観の土壌を豊かにしておけば、いざ就職活動という種まきのシーズンがやってきたとき、しっかりと芽が出て、花開いていくのです。
会うだけでなく、「話せるようになる」こと
もうひとつ強調したいことがあります。それは「慣れる」ということ。「大人に会う」のはいいとして、せっかく会っても、緊張で声が出なかったり、話があちこち飛んでしまって結局何も得られなかったりすると、もったいないですよね。だから、「話し慣れる」こともとても大事です。
ここで言う「話し慣れる」とは、ただニコニコして感じよく振る舞うことではありません。もちろん笑顔は大切なコミュニケーション手段ですが、もう少し踏み込んだ話をしたい。つまり、「相手が何を求めているのかを感じ取る力」を養うこと。そして「自分が何を伝えたいか」を簡潔にまとめる力を身につけることです。こうしたコミュニケーション能力は、就職面接はもちろん、社会に出てからあらゆる場面で役立ちます。
たとえば相手が忙しそうなときに長々と話しても印象は悪くなってしまうし、逆にこちらが一方的に質問攻めして、相手の言いたいことを打ち消してしまうと、「この子は聞く耳を持たないな」と思われてしまう。コミュニケーションは、キャッチボールのようなもの。ボールを投げる(質問する)、ボールを受け取る(相手の話を理解する)、適度な力で返す(自分の意見を簡潔にまとめて伝える)。この繰り返しです。キャッチボールが上達するには、ボールを投げ合う練習が必要ですよね。それと同じで、人と話す「慣れ」や「勘」を養うには、実際にいろんな人と会話する以外に近道はありません。
【「早期に慣れる」ことの強み】
「就活が始まってから大人と話して慣れていけばいいじゃないか」という声もあるかもしれません。でも、それでは遅いと私は思います。就活が本格スタートしてからは、時間に追われ、気持ちにも余裕がなくなりがちです。そんなとき、新しく「話し慣れる」トレーニングを始めても、焦燥感ばかりが募ってしまうでしょう。
いま、この余裕があるうちから、一人でも多くの大人と話し、一回でも多くの対話のキャッチボールを経験しておく。それは、あなたが将来「自分らしい言葉」を武器にして動けるようになるための大きな下地となるはずです。
Vamosが提供する場——学生リポーターになるという選択
では、具体的にどんな場があるのか。私たち「Vamos」では、学生が「大人と対話する場」を創り出しています。その仕組みのひとつが「学生リポーター」という活動です。
学生リポーターは、いろいろな社会人にインタビューしたり、イベントで取材を行ったり、記事を書く過程でたくさんの「大人たち」に出会います。実際にVamosの学生リポーターを経験した人は、「あんな有名な○○社の人と、こんなにフランクに話せると思わなかった」「インタビュー前は緊張で頭が真っ白だったのに、終わる頃には次にどんな人に聞いてみようかワクワクしている自分がいた」など、さまざまな体験談を語ってくれています。
特別なスキルがある必要はありません。むしろ、慣れていないからこそ、学生リポーターという役割を持つことで、「インタビュアーなんだから話しかけても大丈夫!」と自分に許可を出しやすくなる。立場が与えられることで、恥ずかしさや遠慮を超えやすくなります。そして、そのうちに「大人と話すって、当たり前のことなんだな」という感覚が身につくのです。
相手の意図を汲み取るということ
取材やインタビューをしていると、「この人、今何を言おうとしているんだろう?」と考えます。
ただ次の質問を読むだけでは、いい対話は生まれません。相手の表情や言葉の裏側にある考え、気持ち、さらには「本当は何を強調したいのか?」といったことを想像し、拾い上げてみる。そういった行為を繰り返すうちに、あなたのコミュニケーションは磨かれていきます。
社会に出ると、相手が必ずしも明確に意図を伝えてくれるとは限りません。言葉を濁すこともあれば、遠回しに言うこともあるし、そもそも本人ですら自分の意図をはっきり言語化できないこともある。そんなとき、相手の言葉の奥にあるものをくみ取り、「こういうことが言いたいんですね」とこちらから差し出してあげる。
これができる人材は、仕事の現場でとても重宝されます。なぜなら、相手が社内の上司であれ、クライアントであれ、あなたが「意図を理解する人」になれば、信頼関係をスムーズに築けるからです。
簡潔に自分の主張を言えるということ
また、相手の意図を汲み取るだけでなく、自分の意見を簡潔にまとめる力も必要です。就活が始まり、面接などが行われるようになると、「あなたは何をやってきましたか?」「あなたは自分をどう評価しますか?」といった質問が、まるで矢のように飛んできます。そのとき、長々と背景説明をしてから結論を言うような話し方では、時間を無駄にし、相手に「結局この人は何を言いたいのだろう?」と疑問を持たせてしまいます。
簡潔に要点を伝える練習は、インタビューの場で自然と身についていきます。なぜなら、限られた時間の中で、多くの情報を引き出すには、質問そのものをわかりやすく短い形に整理する必要があるからです。また、相手の回答をまとめて記事にする過程で「この人が言いたかった大切な部分はここだな」と取捨選択する訓練を積み重ねれば、自然と自分が話すときにも「この話で伝えたい核はここだ」と絞れるようになる。
Vamosでの経験が広げる可能性
Vamosで学生リポーターを経験すると、当然ながら多くの大人に出会います。広報担当、経営者、現場のリーダー、あるいは新人社員まで、多種多様な人々との出会いがあなたを待っています。その中で、あなたはコミュニケーションの「実地訓練」を行います。一回一回のインタビューが、あなたの中に「こうやって質問するとわかりやすいな」「このタイミングで相槌を打つと相手がもっと話してくれるな」といった気づきを蓄積していくのです。
こうした経験は、いざ就活が始まったとき、「なんとなく他の学生と違う余裕がある」自分を作り出してくれます。「あ、また初対面の人と話すのか。でも大丈夫、今まで何人もそうやってきたから」と落ち着いて臨める。面接官の質問にも慌てず、自分の意見をコンパクトにまとめて返せる。相手の表情やしぐさを見て、「もう少しで終わりそうだな」とか、「この部分をもう少し掘り下げてもいいかもしれない」と判断できる。
就活以外にも役立つスキル
実は、こういった「大人と話すスキル」は就活だけで終わらないんです。社会に出てからも、職場の上司や同僚、取引先の人々、さらには顧客やユーザーにいたるまで、さまざまなコミュニケーションが求められます。時にプレゼンをすることもあるでしょう。時にクレーム対応が求められるかもしれない。そんなときにも、「相手が何を求めているか」をくみ取り、「自分が何を伝えたいか」を簡潔に伝えるスキルは、あなたを助けてくれます。
大人と対話することへの抵抗が少なくなれば、あなたは自然と「この人に話を聞いてみたい」「あの会社はどういう風に動いているんだろう?」と社会に好奇心を持ち続けることができます。好奇心を持ちながら社会に出ていくと、世の中がどんどん面白く見えてくる。するとまた、面白さに導かれて新たな出会いと知識が増えていく。それは、あなたの人生を豊かにする資産になるはずです。
Vamosの活動を勧める理由
なぜ私がこうして、Vamosでの活動をおすすめしたいか。それは、Vamosが就活応援マガジンである以前に、「人と出会い、人から学ぶ場」であり、なおかつ「社会を知る入り口」だと思っているからです。私たちは「情報を発信するメディア」であると同時に、「学生が成長していくメディア」でもありたい。そう考えています。
仕事を見つけるうえで大切なのは、自分を相手に「伝える」能力であり、相手を「理解する」能力です。それは、どんな仕事であっても求められる、普遍的なスキルです。Vamosは、そのトレーニングの場を用意しています。学生リポーターとして記事を書く、取材をする、編集会議に参加する、こうした経験は、まさに「コミュニケーションの筋トレ」と言っていいでしょう。
早めに世界に触れ、対話に慣れよう
就職活動が早まる時代にあって、「早く行動しろ」と言われると、「何をすればいいんだ?」と戸惑うかもしれない。自己分析? 業界研究? それももちろん大事です。でも、その前に、もっと根本的なことをしてみませんか。つまり、「大人たちと話す」という行為です。
それは、社会という大きなフィールドに足を踏み入れる最初の一歩であり、その一歩を早い段階で踏み出すことで、あなたは多くの「得難い感覚」を身につけることができます。大人と話すことに慣れれば、就活が本格化したときも、落ち着いて企業の人事担当者や社員たちと向き合うことができます。相手の意図を汲み取り、自分の考えを簡潔に伝える能力は、あなたの一生の武器となるでしょう。
だからこそ、私たち「Vamos」編集部は、学生のみなさんに「学生リポーター」という形で社会に触れる場を提供しています。
「ちょっと怖いけど、やってみようかな」
「まだ自信はないけれど、面白そうだから挑戦してみよう」
その程度の気持ちでいいんです。最初は誰しも緊張するし、ミスだってする。でもそれを経て、あなたは確実に成長し、「あ、話すって、そんなに怖いことじゃないな」と実感できるようになる。
そして、そうした経験を積んだうえで迎える就職活動は、きっと少し違った風景に見えるはずです。焦燥感よりも楽しさが、緊張よりも知的好奇心が、苦しさよりも手応えが多い、そんな新しい景色が広がるでしょう。
最後に
27卒のみなさん、あなた方はまだまだ若く、自由で、未来に向けて可能性を秘めています。就活はゴールではありません。社会に出るまでの道のりに過ぎないし、社会に出てからが本当の冒険の始まりです。その冒険に備えて、いま、少しずつ「大人と話す」ことに慣れ、社会という大海原に出るための航海術を身につけていきませんか。
Vamosは、その旅をお手伝いする一つの港であり、船の操縦訓練を受けられる場所でもあります。ぜひ、この機会を活かして、多くの大人たちとの対話を重ね、自分の言葉で世界を切り開いていってください。あなたの未来が、より豊かで面白いものになることを、心から祈っています。