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インタビュー

「公務員=堅い」はもう古い!?福岡県庁が明かす公務員試験の最新事情! 

SPI導入で公務員試験が変わる!福岡県庁が進める新採用戦略

リクルートWebマガジンでは今回、福岡県人事委員会事務局にインタビューを行いました。そもそも県庁にはどんな仕事があるのか。また、普段あまり馴染みのない「人事委員会事務局」が、どのように採用や昇任、給与に関する事務を行うのか、その実態に迫ります。県庁職員4万人という大規模組織を支える要となる仕事は、まさに“縁の下の力持ち”。公務員試験の最新事情や職場環境、そして学生レポーターならではの視点から見えたコミュニケーション力の重視など、興味深いトピックが満載です。「公務員としての使命感」や「協調性」をどのように発揮しているのか――そのヒントをぜひ記事でご覧ください。

「人事委員会事務局」の役割と県庁の規模の大きさ


本日はどうぞよろしくお願いします! 「県庁の仕事」というと漠然としたイメージしかないので、具体的な業務内容や働き方をぜひお聞かせいただきたいです。

福岡県庁・人事委員会事務局 大群さん:
こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。学生さんの視点からどのような質問が出るのか私も楽しみにしています。お答えできる範囲で詳しくお話ししたいと思います。


1-1. 人事委員会事務局とは?

さっそくですが、はじめに「人事委員会事務局」という名称にピンとこない学生も多いと思います。具体的にはどのような役割・業務を担っているのでしょうか?

人事委員会事務局は、知事や教育委員会、警察本部など、いわゆる“任命権者”から独立した立場で、中立的かつ専門的に県職員の人事や採用を扱う部署です。

大きく分けると、

といった業務を行っています。これらは、福岡県庁という組織の人事全般に関わる大切な仕事です。さらに採用試験を行うため、各大学の就職イベントや合同説明会でブースを出したり、パンフレットを作って仕事の魅力をお伝えしたりしています。

なるほど。採用関連だけでなく、県職員の給与や人事、懲戒処分など、多岐にわたるんですね。大学の就職説明会にもいらっしゃるとのことなので、私たち学生とも接点がある部署というわけですね。

そうなんです。公務員試験というと堅いイメージかもしれませんが、ここ数年はSNSも活用しながら、学生さんとの接点を増やす努力をしています。実際、担当者が大学のキャリアセンターに呼ばれて説明会を開くこともあります。


1-2. 県庁の規模の大きさに驚き!

ところで、県庁周辺を車でぐるっと回ってみたんですが、とにかく建物が大きい! 福岡県庁全体でどれくらいの職員がいるのかイメージしづらいのですが、実際はどのような規模感なのでしょう?

福岡県庁の本庁舎だけでも3千人以上が勤務しています。事務職や技術職などの行政系だけでなく、警察官や学校の教職員まで含めると県職員全体の合計では4万人ほどになります。学校の先生は市立や町立の教員の場合、市町村が雇用している印象をお持ちかもしれませんが、北九州市と福岡市を除く教員の給与の支払いは、県が支払っています。

4万人……! それは相当な人数ですね。先生や警察官のような職種も「県職員」に含まれるというのは、学生にとっては意外と知られていないかもしれません。

そうですね。特に福岡県は大規模な自治体のひとつなので、職員数も多く、どんな仕事を誰が担っているか把握するだけでも大変です。それだけ多様な職種が揃っているとも言えます。


市役所との違いと多彩な“縁の下”業務


市役所や区役所は住民票や税金の窓口などでよく利用するのでイメージしやすいのですが、県庁はあまり意識したことがない人が多い気がします。実際に市役所との違いはどんなところにあるのでしょう?

よく聞かれます。結婚や出生、転居などで届出が必要な場合、あるいは上下水道などの行政サービスを受けようとする場合は、市町村の役場に行っていると思いますので、市町村の仕事はイメージしやすいと思います。北九州市と福岡市の政令指定都市では、通常県が行っている保健所や県道の管理といった業務なども行っていますので、「県庁はあまり意識したことがない」と感じる方はさらにも多いと思います。
しかし、例えばパスポートの発行業務は県が担当していますし、子ども医療費についても市町村に助成を行うことで、県内全市町村で中学生以下の無料化が実現しています。道路や河川、ダムといった広域にわたるインフラ整備を行い、災害の備えや物流や水の供給を行うことも県庁の大事な仕事です。直接的に市民の方に関わっているのは市町村ですが、そのバックボーンには県庁が存在しています。

なるほど。たしかにパスポートセンターは県が運営していましたね。そういう意味では、多くの住民サービスを支えている立場なんですね。

そうなんです。直接県庁を訪れる機会は少なくても、生活を支える基盤には県の仕事が存在します。私たち人事委員会事務局も、その「縁の下の力持ち」として職員をしっかり採用・サポートする役割を担っているわけです。


2-1. 多彩な業務事例

もう少し詳しく、県庁が管轄している業務事例を教えていただけますか? パスポート以外にも具体的なものがあると、学生が想像しやすいかと思います。

また、コロナ禍のときに話題となった臨時医療施設の設置やワクチン接種の調整なども、県の大事な仕事でした。広域的な観点で病床をどう確保するか、医療機関とどのように連携するか――こうした部分は一つの市町村だけで完結できない規模の連携が求められています。

確かに、コロナ禍での医療体制確保には県の動きが欠かせない印象でした。表に出づらい業務ですが、ものすごく重要な仕事ばかりですね。


採用試験と大切にしているポイント


福岡県庁の採用試験は多くの方が受けられると伺いましたが、どんな流れで行われていて、どんな人材を求めているんでしょうか?

福岡県の採用試験では、筆記試験(ペーパーテスト)、面接など複数種類の試験を行ってます。もちろん一定の学力は必要ですが、コミュニケーション能力も重視しています。
県庁内には多くの部署がありますし、市町村や外部機関との連携が欠かせません。「相手の話をしっかり聴く」、「自分の意見をわかりやすく伝える」といった力がないと、どんなに優秀でも仕事を進めるのが難しい場面が出てきます。

なるほど。公務員だから黙々と事務作業というわけでもなく、調整や折衝が多いんですね。ちなみに、試験内容が変化してきていると聞きましたが?

はい、民間企業志望者でも受験しやすくなるよう、今年の4月にSPIを利用した春季試験を実施する予定です。また、例年行っている6月の試験も教養試験の内容を見直したりしています。さらには、早期化する就活に対応して、大学1~2年生のうちから情報収集してもらえるようLINEなどのSNSもを活用しています。


3-1 採用における学力と人柄のバランス

試験というと学力が重視されるイメージでしたが、面接などのコミュニケーションもカギを握るのですね。

そうですね。面接や集団討論などの場面で、普段の人柄やコミュニケーション力を見ています。県庁の場合は調整が本当に多いので、「自分の意見だけを押し通すのではなく、周囲と協力していけるか」といった要素は大切です。
ただし、専門知識が求められる部署もあるので、そこは学ぶ力もおろそかにできません。最終的には学ぶ力と人柄のバランスが大事だと思います。


働く魅力と求める職員像


民間企業と県庁では、働く上でどんな違いがあるのでしょうか? 「社会に貢献したい」という思いはどちらも同じような気はしますが、県庁ならではの魅力を教えてください。

民間企業でも公務員でも、製品やサービスを提供し、お客さんあるいは市民の方の満足度を上げていくということは変わらないと思います。違いを言うとすれば、私たち公務員が担うのは、皆さんからいただいた税金によって住民の暮らしの根本を支える仕事という点でしょう。具体的には、道路整備や安全対策、教育、医療、社会福祉など、多岐にわたります。県庁の場合は「住民の声に基づく公共サービスの充実」がゴールとなります。
たとえば道路を整備すると多くの人が便利になりますし、子どもたちのための施策を立てれば将来の社会を変えるきっかけになるかもしれない。そういうダイナミックさと使命感を味わえるのが、県庁で働く大きな魅力だと思います。

なるほど……。「縁の下の力持ち」として支える分、誰かから直接「ありがとう」と言われる機会は少ないかもしれませんが、多くの人の役に立つ充実感はありそうですね。

実際に「ありがとう」と言われることが少なくても、住民の暮らしを守っているやりがいは大きいですよ。私自身、ずっと県庁で働いてきて、そこが1番のモチベーションになっていると感じます。


4-1. 公式の「理想の職員像」

公式に発表されている「理想の職員像」があるそうですが、どんな要素が求められているのでしょうか?

はい、福岡県庁ではこの3つを示しています。

これに加えて、先ほどお話ししたコミュニケーション能力や積極性も欠かせません。

まさに「公務員としての使命感」や「協調性」を重視しているんですね。就活活動の中でも、こういったポイントを意識すると、より県庁の仕事に合うかどうか見えてきそうです。

そうですね。公務員としては規律を守ることも当然大事ですが、それを踏まえた上で臨機応変に対応できる力、周囲を巻き込んで仕事を進める力が求められていると思います。


キャリアパスと管理職の視点


ここからは大群さんご自身のキャリアについて伺いたいと思います。最初の配属から、どのようにキャリアを積まれてきたのでしょうか?

私は今から37年前に福岡県庁に入りました。最初の配属は「医療指導課」で、たとえば救急医療やへき地医療の整備を担当しました。救急医療やへき地医療に必要な機器を導入するための補助金手続きなど、医療行政に携わりました。
その後は土木事務所へ移って道路や河川整備に関わる用地買収を行い、さらに企業研修でJR九州に1年間出向。県内の市町村を支援する行財政関連の部署を経て、北九州市に隣接する苅田町(かんだまち)の副町長を3年ほど務めましたね。戻ってからは「県民情報広報課」などを経て現在に至る形です。

苅田町で副町長……! 行政職は配属先がたくさんあると聞いていましたが、ここまで多彩だとは思っていませんでした。特に印象に残っているエピソードはありますか?

最近だと、やはりコロナ禍での県民情報広報課長時代ですね。令和2年4月に課長に就任したタイミングで、緊急事態宣言や臨時休校など未曽有の事態が相次ぎました。新型コロナウイルスに関する情報も不明確なことが多く、知事会見を通して、どのようなメッセージを発信すれば、県民にわかりやすく伝わるか――すべてが手探り状態でしたが、責任が重大な分、やりがいも感じました。


5-1. 管理職として心がけること

さまざまな部署を経験された大群さんだからこそ見えてくるものも多そうですね。管理職として大切にしていることは何でしょうか?

一番大切なのは、「メンバーが働きやすい環境を整えること」だと思います。失敗を責めるのではなく「どうすれば次はうまくいくか」を一緒に考えたり、意見を言いやすい雰囲気を作ったりすることで、職員一人ひとりのパフォーマンスが高まります。
私自身も若い頃は目の前の業務に追われがちでしたが、管理職になると視野を広く持ち、チーム全体の最適化を考えるようになりました。そこで大事なのは「コミュニケーション力」ですね。公務員はチームプレーではないと、成立しない場面が多いと思っています。


福岡ならではの魅力・課題と試験制度の変化


福岡県庁で働く中で、福岡特有の魅力や課題を感じたことはありますか? 学生目線だと「グルメが豊富」「交通の便が良い」といったイメージがありますが、一方で人口や産業構造の問題も耳にします。

福岡県には、製鉄など第2次産業で栄え、高い工業集積、 技術集積を有する北九州地域、全国的にも人口増など成長が著しい福岡地域、田園風景の中に農業や工業が点在する筑後地域、近代日本のエネルギーを支えた筑豊地域の4つの顔があると言われています。産業構造や人口動態、歴史的背景がそれぞれ異なるため、地域間格差や課題も様々です。
こうした多様性が福岡県の強みでもあります。また、県内は二つの空港で世界ともつながり、新幹線や高速道路などの交通網も整備されています。各エリアの強みを生かして、どのように連携させて福岡県を発展させていくかが、県庁の腕の見せどころと思っています。


6-1. 公務員試験の新しいかたち

地域によって求められる施策が違うのは興味深いです。公務員として県庁で働くにも、多方面の知識が必要そうですね。ところで、公務員試験自体も変わってきていると先ほども伺いましたが、具体的にはどんな変更が行われていますか?

今、大学生の皆さんの就職活動は早期化しています。このため、これまでより採用試験の結果が早くわかるよう、春季試験を創設しました。この春季試験は、民間企業と併願しやすいように民間企業の採用でも利用されているSPIを取り入れています。また、これまでの採用試験と同じ6月に行う試験の教養試験についても、自然科学系の問題をなくした基礎能力試験に変更しています。
また、SNSやLINE公式アカウントで試験情報を流すなど、学生の皆さんがスマホで気軽に情報をキャッチできるように取り組んでいます。

公務員試験というと「筆記がすごく難しい」「堅い」というイメージを持っていましたが、意外と柔軟に変化しているんですね。これは民間志望と併願を考えている学生にとってはうれしいですね。

ええ、筆記試験で一定の基礎能力を見るのはもちろんですが、県庁職員にはやはりコミュニケーション力や協調性も重要ですので、その点を評価しやすい仕組みに変わってきています。


学生へのメッセージと取材後の雑談


仕事とプライベートの切り換えについてお聞きしたいのですが、大群さんはどんなリフレッシュ方法をお持ちですか?

私はジョギングやサッカー観戦を楽しむことが多いですね。体を動かすことが好きなので動いてリフレッシュしているんだと思います。

学生時代にやっておいた方がいいことはありますか?

特に「就職に向けてこれをしておいた方がいい」というものはないかもしれません。でもできる間に色んな経験はした方がいいと思います。私の場合、学生時代はサーフィンをやっていて、天気図を読むのが妙に得意になりました(笑)。それが直接仕事に活かせているかは微妙ですが、「何事も無駄にならない」というのは実感しています。
特に学生のうちは、海外に行ったり、友達といろんなことに挑戦してみるのもいいと思います。どんな経験も社会人になってからの財産になるはずです。

分かります! 私もまだ2年生ですが、今のうちに留学やインターンなどいろいろ体験しようかなと思っています。忙しさに流されてしまいがちですが……。

忙しさに追われるのは社会人になってからでも充分経験しますから(笑)。今のうちにやりたいことを目いっぱい楽しんでください。


7-1 学生への最終メッセージ

最後に、就職活動や将来のキャリアに悩む学生へ一言いただけますか?

公務員に限らず、特に仕事は「やりたい仕事」より「やらないといけない仕事」の方が多いです。この“やらないといけないこと”を「あれうまくいったよね」、「前よりいいね」とか楽しみながらすること。いずれ「自分が本当にやりたかった仕事」をすることになってもその過程で「やらないといけないこと」はたくさんあります。ぜひ、「やらないといけないこと」を楽しんでください。
それから、ミスや失敗を怖れず、どんどん意見を言ってほしいと思います。実際に、福岡県庁でも若い職員の提言を受けて、どんどん業務改善をやっています。私たち公務員も、新しい感性や行動力を持った若い方を大歓迎しています。

ありがとうございます。今日のお話を聞いて、県庁の仕事や公務員のイメージがずいぶん変わりました。コミュニケーション力がそんなに大事だとは思っていませんでした。

多種多様な地域の課題を同時並行で解決していくダイナミックさに魅力を感じました。若手の意見も取り入れる土壌があると聞いて安心です。

私も、公務員の方々が思っていた以上に柔軟で、若い人の意見を積極的に取り入れている姿勢に驚きました。就活を控える学生仲間にも、ぜひこの取材内容を共有したいです!

こちらこそ、今日はありがとうございました。お二人とも鋭い質問が多くて、私も改めて「県庁で働く意義」を学ぶ良い機会になりました。ぜひ採用試験や説明会などで、この記事を読んで興味を持った学生さんにお会いできればと思います。

そうですね。きっと多くの学生が「公務員も選択肢に入れてみようかな」という気持ちになってくれるはずです。今後も福岡県を盛り上げる取り組み、楽しみにしています!

今回の取材を通して、人事委員会事務局の幅広い業務や、公務員として求められる姿勢の重要性を深掘りすることができました。採用試験の変化や職員育成の考え方など、多種多様な業務において“柔軟な対応”と“コミュニケーション力”が鍵を握っているのが印象的です。一見地味に思われがちな県庁の仕事ですが、実は地域の課題解決を根本から支えるダイナミックなフィールド。学生にとっても「公務員」を選択肢に入れる際の大きな参考になるはずです。ぜひ最後まで記事を読み進め、福岡県人事委員会事務局のリアルな一面をのぞいてみてください。