旅行会社の仕事と聞くと、カウンターで観光プランを案内する姿を思い浮かべる人も多いかもしれません。
けれど、西鉄旅行が担っているのは、そうした観光の仕事だけではありません。
企業の出張、修学旅行、スポーツチームの遠征、国際会議――。
「人が動く」あらゆる場面を支える総合旅行会社として、西鉄旅行は地域と世界をつないできました。
今回は、北九州出身で入社29年目を迎える井手上支店長にお話を伺いました。
学生リポーター3人が、仕事の現場ややりがい、そして“人を支える仕事”の本質を探ります。

創業から78年。「人が動く」を支えてきた会社
今日はありがとうございます。
正直、旅行会社ってツアーを売る仕事のイメージが強いんですが、西鉄旅行さんもそういう感じなんですか?
そう思われることは多いですね。でも、実際は少し違います。
まず会社の成り立ちから話すと、西鉄旅行は西日本鉄道のグループ会社として、戦後すぐに誕生しました。
当時は「西鉄観光」と「西日本鉄道旅行事業部」という二つの会社があって、観光は国内旅行、旅行事業部は海外旅行や航空券の発行を専門にしていたんです。その二社が1980年代に統合されて、今の西鉄旅行になりました。
戦後すぐって、かなり昔ですよね。
そうですね。創業から数えると、もう78年になります。日本が復興して、人が少しずつ自由に動けるようになる時代に、「その移動を支える役割」を担ってきました。
当時は海外に行くだけでも大変で、航空券を発行するにも特別な資格が必要でしたから。
今の感覚だと想像できないですね。
だからこそ、西鉄旅行の根本には「人の移動を、仕組みとして支える」という考え方があります。
観光だけじゃなく、仕事や教育、スポーツ、イベントなど、目的に合わせた“旅の形”をつくってきた会社なんです。
なるほど…。ただの旅行会社じゃないんですね。
そうですね。「移動のプロ」と言ってもらえると、一番近いかもしれません。
特に今は、企業や団体のお客さまが多くて、どこで、誰が、どう動くのか――その“動き全体を設計する”仕事が中心です。

観光だけじゃない。3つの事業領域
さっき出てきた「仕事やスポーツ」って、もう少し具体的に聞きたいです。
西鉄旅行の仕事は、大きく分けて三つあります。
まず一つ目は、企業や団体向けの法人営業です。企業の出張や研修、視察などをサポートしています。
出張の手配も旅行会社がやるんですね。
そうなんです。例えば、社員が複数の都市に出張する場合でも、航空券、宿泊、精算までをまとめて管理します。
企業側にとっては、社内の手間が減るし、経費も分かりやすくなる。単なるチケット手配ではなく、業務を効率化する仕組みを提供する仕事です。
旅行というより、ビジネスの裏側を支えてる感じですね。
まさにそうですね。企業の総務部や人事部のパートナーのような立ち位置です。
そして二つ目はMICEです。国際会議や学会、展示会などの運営をサポートする仕事です。

北九州にも国際会議場がありますよね。
ありますね。そういった会場で開かれる国際会議で、宿泊や移動、受付などをまとめて担当することもあります。
参加者は全国や海外から来るので、交通と宿泊をどう組み合わせるかがすごく重要なんです。
イベントを成功させるための裏方ですね。
そうです。「イベントを成立させるための人の動線づくり」が、私たちの仕事です。
三つ目がスポーツ関係ですよね。
そうですね。最近とくに力を入れている分野です。プロ野球、Jリーグ、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなチームの遠征をサポートしています。
チーム全員分の移動って、かなり大変そう…。
飛行機や新幹線、宿泊、バスの手配はもちろん、試合開始時間や練習、食事制限まで考慮してスケジュールを組みます。試合前に余計なストレスをかけないことが、何より大切です。
確かに、観光とは全然違いますね。
そうなんです。でも、これも立派な「旅」。
Jリーグだけでも全国に約60チームありますが、その3~4割を担当しています。責任は大きいですが、無事に選手やスタッフを送り届けられた瞬間は、本当にやりがいを感じます。

“売る営業”ではなく、“関係をつくる営業”
法人向けの仕事って、どうやってお客さんを見つけるんですか?
基本は、こちらから動きます。
昔から取引のある会社には定期的に顔を出しますし、新規の場合は、本当に地道ですね。ホームページを見たり、飛び込みで訪問したりすることもあります。
今でも直接行くんですね。
はい。やっぱり直接会って話すことで、少しずつ信頼が生まれる。
すぐに仕事につながらなくても、「困ったら井手上さんに相談しよう」と思ってもらえる関係をつくることが大事です。
リピーターが多いんですか?
圧倒的に多いですね。一度担当した会社が、翌年もお願いしてくれたり、担当者が異動して別の部署で紹介してくれたり。
営業というより、「人のつながり」で仕事が続いていく感覚です。
トラブルが成長のチャンス。判断力が問われる現場
ここまで話を聞いていると、かなり現場判断や人の動きが重要な仕事だと感じました。
最近はAIやDXが進んでいますが、旅行業界でもそういった影響はあるんですか?
ありますよ。ただ、便利になるほど、人の判断が重要になります。
台風で飛行機が止まったとき、AIは別ルートを出せても、それが本当に安心かどうかは判断できません。
現場での対応が大事なんですね。
そうですね。添乗で500人規模の団体を動かすときは、本当に判断の連続です。
誘導する列を止めなきゃいけない時は必ず理由を伝える。不安そうな人がいたら声をかける。それだけで、全体の空気が変わることもあります。
500人規模を動かすって大変そうですね…!マニュアル通りにはいかないですよね。
本当に大変ですよ(笑)正解は一つじゃありません。
だからこそ、経験の中で「今のベスト」を選ぶ力が身についていきます。
人に興味を持てる人が、一番伸びる
どんな人がこの仕事に向いていると思いますか?
一番は、人に興味を持てる人ですね。
話す力より、聞く力。「この人は、何を求めているんだろう」と考えられる人は、自然と成長します。
知識よりも姿勢なんですね。
そうです。知識は後から覚えられますが、姿勢は簡単には変えられません。
人の気持ちを想像できること。それが、この仕事で一番大事だと思っています。
取材を終えて
西鉄旅行は、70年以上にわたり「人の移動」を支えてきました。
華やかな観光の裏で、人の想いをくみ取り、信頼を積み重ねる。
営業は“売る”より“聞く”ことから始まり、
AIが進化しても、最後に判断し、人を動かすのは人です。
「何をするか」よりも「誰と働くか」。
井手上支店長の言葉から、仕事の本質が静かに伝わってきました。
旅も仕事も、人の心で動いている。
西鉄旅行には、そんな温かさがありました。