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インタビュー

売り場に並ぶ“あの味”の裏側で。~森永を九州に届ける知られざる仕事。~

「見慣れた商品」があなたのもとに届くまで、そこには知られざる仕事がある。 

コンビニで手に取るアイス、スーパーで目に入るチーズやヨーグルト。その「見慣れた棚」は、毎日誰かが足を運び、交渉し、提案を重ねることで作られています。

今回話を聞いたのは、森永乳業グループの販売会社として九州·沖縄エリアを担う会社の阪井取締役と前田管理部長。棚割りの交渉や新規開拓といった営業のリアル、合併と熊本地震を仲間と乗り越えた10年、そして「アイスが好き」というシンプルな動機からキャリアをスタートさせた前田管理部長の話まで、本音で語ってもらった。 読み終えたとき、きっとあなたのそばにある「いつもの商品」が、少し違って見えるはずです。

森永ブランドを九州へ届ける会社—地域に根ざす“販売会社”の正体とは

今日はよろしくお願いします。いきなりなんですが、まずは改めて、皆さんの会社がどんな役割を担っているのか教えていただきたいです。森永乳業の名前は知っているんですけど、「本体」と「販売会社」の違いって、学生からすると少しイメージしづらくて…。 

こちらこそ、よろしくお願いします。 

私たちの会社は、森永乳業グループの販売子会社で、九州と沖縄のエリアを担当しています。もともとは、森永乳業の九州支店と、アイスやデザートなどを扱う販売会社が別々に存在していました。親会社と子会社、立場は違うのに、同じお取引先に別々の営業マンが行っていたんですね。 

同じスーパーに、森永の人が2社分行っていた、みたいなイメージですか? 

そうですそうです。片方は飲料やチーズ、もう片方はアイスクリーム。それぞれ扱う商品は違うけれど、訪問する先は同じ。「これは効率が良くないよね」という話になって、2016年に統合され、今の会社が誕生しました。 

なので、今年で会社としてはちょうど10年ちょっと。まだ“歴史の浅い会社”でもありつつ、森永乳業グループとしての長い歴史の上に成り立っている会社でもある、という感じですね。 

エリアは九州·沖縄とのことですが、メーカー本体との関係はどうなっているんですか? 

資本関係はありますが、法人としては別会社です。

私たちは、その森永乳業のブランド商品を、九州·沖縄のスーパー、ドラッグストア、コンビニ、そしてケーキ屋さんや外食産業などの業務用のお客様へ届ける役割を担っています。いわば「森永乳業の顔」として、地域のお客様と向き合っている会社です。 

社員数は約85名。設立後、毎年3~4名ずつ新卒採用を続けてきたので、今では社員の半分近くが“合併後に入社した世代”です。平均年齢は40代前半くらいですが、若手も多く、女性社員も3割強在籍しています。 

「メーカー」と聞くと、本社での商品開発やマーケティングのイメージが強かったんですが、実際には、こういう“地域で売ることに特化した会社”が支えているんですね。 

棚割り・提案・新規開拓。森永が売り場に並ぶまで。

営業の話をもう少し詳しく伺いたいです。森永乳業さんってブランド力もあって、「置かせてください」と言ったらすぐOKが出るイメージが正直あるのですが、実際はどうなんでしょう。 

たまにそういうラッキーなケースもありますが(笑)、基本的にはそんなに甘くはありません。 

スーパーの売り場に行くと、棚にびっしり商品が並んでいますよね。あれは、スーパー側が「どこに何を、どれくらいの幅で置くか」を細かく決めています。私たちは、その貴重な棚の一部を森永の商品で埋めてもらえるように、「棚割り」の提案をしていくわけです。 

「この段に、うちの商品をこれくらい置いてください」と交渉していくイメージですか? 

そうです。新商品やリニューアル商品の場合は、バイヤーさんに試飲·試食をしてもらって、商品の特徴をしっかり伝えます。そのうえで、「こういう味なので、こんなターゲットのお客様に合います」「この価格帯なら、既存商品のここに入り込めます」といった提案を行います。 

さらに、チーズだったら「このチーズでこんなグラタンが作れますよ」とメニュー提案をしたり、「冷蔵ケースのこの位置に置くと、他の○○と一緒に手に取ってもらいやすいです」と売り場全体の提案をしたり。単に「商品を仕入れてください」ではなく、「どうやったら売れるか」まで含めて提案するのが営業の仕事です。 

業務用の分野では、ケーキ屋さんや外食チェーン向けの生クリーム·乳製品·原材料も扱っています。問屋さんと一緒に新しいお店を訪問して、「他のチェーンではこんな使い方で好評でした」と事例を示しながら提案することもありますね。 

営業1人あたり、お取引先はどれくらい担当されるんですか? 

量販店担当の場合、チェーンにもよりますが、1人で30~40店舗を見ていることが多いです。同じチェーンでも、ドーム近くの大型店と住宅街の小型店では売り場の広さもお客様の層も違うので、それぞれに合わせた提案をしていく必要があります。 

新規開拓もあるんですか? 

あります。特にケーキ屋さんなどの業務用は、問屋さんと一緒に飛び込みで訪問するケースもあります。「今度、他社さんから切り替えを検討しているらしい」という情報が入ったら、すぐに足を運ぶことも。 

ブランドに甘えるのではなく、ちゃんとお客様の現場まで出向いて、試食や提案を重ねていく。その積み重ねでしか、信頼は得られないなと感じています。 

その分、新製品説明会のときは社員全員でしっかり試食します(笑)。自分自身が好きになれない商品って、やっぱり心からおすすめできないですからね。 

社内の冷凍庫で差し入れのアイスが自由に食べられる、というのは本当ですか? 

本当です(笑)。 私もアイスが本当に好きで、この業界に入ったような人間なんですよね(笑)

新人を“ひとりにしない“。メンター制度と、相談できる職場つくり。

営業に配属されたら、どんなふうに育成されるんですか?「いきなり1人で行ってこい」というイメージもあるのですが…。 

少なくとも、うちではそれはやっていません(笑)。 

新入社員には必ず先輩社員がメンターとしてついて、半年~1年ほどは同行営業が基本です。訪問前の準備から商談の進め方、売り場のチェック、帰社後の報告の仕方まで、なるべく現場で一緒にやって見せながら覚えてもらいます。 

「営業として大切にしてほしいこと」はどんなところですか? 

お得意先あっての仕事なので、「自分たちの都合だけを押し通さないこと」ですね。売り場のスペースは限られていますし、先方にも売上·利益の目標があります。その中で、どうやってお互いにとってプラスになる提案ができるか。 

その感覚は、一緒にお客様を回る中で少しずつ身についていくものだと思っています。 

働き方の面で言うと、今はフレックスタイム制も導入しています。事前にスケジュールに入力しておけば、日によっては少し早く上がって家族の用事に行くこともできますし、逆に繁忙期はしっかり働く、というメリハリをつけやすくなりました。 

男性の育児休暇についても、取り組まれていると聞きました。 

はい。森永乳業本体と連動する形で、「男性の育児休暇取得率100%」を目指す取り組みを進めています。法律上、有給にする義務はありませんが、一定期間を有給扱いにするなど、制度面での後押しも強化しているところです。 

赤ちゃんのミルクも扱っている会社なので、子育てとの両立を応援するのは“自分たちの存在意義”にも通じると感じています。 

女性社員も3割以上いますし、「ライフステージが変わっても働き続けられる会社でありたい」というのは、経営側として強く意識している部分です。 

若手とのコミュニケーションで意識されていることはありますか? 

「相談しやすい雰囲気」をつくることです。忙しいと、つい顔が険しくなってしまいがちですが(笑)、そこをグッとこらえて「大丈夫、今から話そうか」と言えるように心がけています。 

私は「傾聴」を意識しています。まずはきちんと話を聞いて、「大変だったね」「その考え方いいと思うよ」と共感する。そのうえで、自分の経験からのアドバイスを少し足すイメージです。 

一方的に「こうしろ」と命令するのではなく、「こう思うけど、●●さんはどう感じる?」と問いかけながら、一緒に答えを見つけていく。その方が仕事も前向きになりますし、何よりお互いに気持ちよく働けると感じています。 

合併と熊本地震。設立からこれまでに乗り越えてきた試練 

設立から10年ちょっとの中で、1番大変だった出来事は何ですか? 

やはり、合併と熊本地震ですね。 

2016年4月に今の会社としての営業をスタートした直後、同じ月の14日に熊本地震が発生しました。私たちの拠点も熊本にありましたし、物流やお取引先にも大きな影響が出ました。合併による仕組みづくりと、震災対応を同時並行で進めなければならず、緊張の続く日々でした。 

私は当時、東京の本体側から立ち上げ応援で九州に来ていて、熊本の事務所で請求業務の立ち上げを手伝っていたんです。そこに地震が来て…。 

飛行機が飛ばないので、とりあえず福岡まで行って、そこからレンタカーで熊本へ。熊本市内はホテルが取れないので、大牟田や久留米まで戻って泊まり、翌朝また熊本へ。そんな生活をしばらく続けました。 

聞いているだけでも、かなりハードな状況だったのが伝わってきます…。 

それでも、森永乳業本体からの応援が非常に早くて、全国から仲間が駆けつけてくれました。あの時に感じた「グループとしての支え合い」は、今でも心に残っています。 

合併の方はどうでしたか?文化も違う2社が一緒になるのは、想像しただけで大変そうです。 

そうですね。親会社側と販売会社側、もともと別々の会社だったので、仕事の進め方や考え方が違う部分はたくさんありました。ただ、新卒や中途で“合併後に入ってきたメンバー”が増えてくるにつれて、少しずつ空気が変わっていった感覚があります。 

完全に「1つの会社」になったなと感じるまでには、2~3年くらいはかかったでしょうか。 

もともと九州支店同士での交流はあったので、ゼロからのスタートというわけではありませんでしたが、「社名だけ変わる」のと「仕組みや文化まで統一する」のは別物ですからね。 

でも、いろいろあっても、若手社員が笑いながら働いている姿を見ると、「この10年の苦労は意味があったな」と思います。 

“人柄で採る”。採用の軸と、大切にしてほしいこと。

お二人とも採用に関わっていらっしゃると伺いました。どういう学生と一緒に働きたいと思われますか? 

一番は「人柄」と「協調性」です。 

うちはチームで動く仕事が多いので、「この会社の雰囲気に合いそうか」「周りと協力しながら仕事ができるか」という点をよく見ています。面接で完璧な答えを用意しているかどうかよりも、「この人と一緒に働いたら楽しそうだな」と思えるかどうかを大事にしていますね。 

私はまず、第一印象を見ます。総合職として採用しつつも、「営業向きか」「管理向きか」といった適性を、会話の中から探っています。 

営業を採りたいときは、やっぱりコミュニケーション力。といっても、おしゃべりが上手というより、「自分から質問できるか」「相手の話をちゃんと受け止められるか」といったところですね。 

社会人として働くうえで、「これは大事にしてほしい」というポイントがあれば教えてください。 

基本ですが、「挨拶ができること」と「わからないことをそのままにしないこと」。この2つです。 

入社して数年経つと、「今さら聞けない」と一人で抱え込んでしまう人もいます。でも、新入社員のうちなら、「聞いた方が絶対いい」。むしろ聞かないまま進めて大きなミスになる方がよほど怖いですからね。 

「アイスが好き」から始まった、キャリアの話。

お二人自身の就活の話も、少し聞いてみたいです。どういうきっかけで、この業界·会社を選ばれたんですか? 

私は本当に単純で、「アイスクリームが好きだったから」です(笑)。 

就活のときは、デザートや飲料などの“おいしいもの”を扱う会社ばかりを受けていました。「会社でアイスが食べられたら最高だな」と本気で思っていましたし、実際、今も社内の冷凍庫にはアイスが入っていて、午後になるとつい1本手に取ってしまいます。 

私は新卒で別の販売会社に入り、東京勤務も経験しましたが、最終的には地元に戻ってきたタイプです。 

東京は刺激も多くて楽しい場所ですが、人の多さや満員電車が自分には合わなくて…。福岡に戻ってきて、「やっぱり自分のペースで暮らせる場所が落ち着くな」と実感しました。 

私も北九州出身で、福岡で採用されてから東京に転勤し、その後また九州に戻ってきました。学生さんの間でも、最近は「東京や大阪に出たい」という声が増えていると聞きますが、最終的には「どこで、どんな生活をしたいか」も含めて考えてほしいなと思いますね。 

就活をしていると、「地元で働くか」「都市部に出るか」は大きなテーマになりますよね。どちらにもメリット·デメリットがあるなと感じます。 

どちらが正解、という話ではないと思います。ただ、地元に根ざした仕事には、「自分が普段使っているお店に、自分の関わった商品が並ぶ」という喜びがあります。 

例えば、地元のスーパーで、自分が棚割りを提案した商品が売れていくのを見ると、「あ、ここに自分の仕事がちゃんと残っているな」と感じます。 

そして、その裏側には、「社内で相談できる先輩や上司がいること」「困ったときに助けてくれる人がいること」が欠かせません。だからこそ、私たちはコミュニケーションや関係づくりを大事にしています。 

今日のお話を聞いて、「アイスが好き」というシンプルな動機からでも、ここまで深いキャリアにつながっていくんだ、というのがすごく印象的でした。 

就活のスタートは、別に「立派な理由」でなくてもいいと思いますよ。アイスが好きでも、地元が好きでも、安定した会社で働きたいでも。 

大事なのは、入ったあとに「この仕事をちゃんと自分ごとにしていけるかどうか」。その過程で、いろんな経験を積んでいけたらいいんじゃないかなと思います。 

まとめ 

森永乳業グループの一員として、九州·沖縄に“いつもの味”を届け続ける。その舞台裏には、棚割りや提案型営業の奥深さ、新人を一人にしない育成文化、合併や震災を仲間と支え合って乗り越えた10年の積み重ね、そして何より「人柄を大切にする会社」という揺るがない姿勢がありました。 

前田管理部長の「アイスが好き」という飾らない原点も、阪井取締役の「地元に戻ってきた」という選択も、働くことは“完璧であること”より“どう向き合うか”だと教えてくれます。 

企業を選ぶ基準は人それぞれ。でも最後に残るのは、「この人たちと働きたいか」「この場所で自分らしくいられるか」という感覚です。 

今回の対談が、あなたのキャリアを考えるときの、小さな灯りのひとつになれば幸いです。 

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