VAMOS

投稿のサムネイル
event

“聞く就活”から、“知りに行く就活”へ — G1グランプリ参加企業御礼訪問レポートvol.1 小林青果株式会社編—

学生が企業を訪ね、自分の言葉で伝えるG1グランプリ

就活イベントという言葉から思い浮かぶ風景は、どちらかというと「学生が企業の説明を聞く」という受け身のものが多いように思います。会場に並んだブースを順に回り、各社の担当者が用意した資料に目を通し、説明を受け、質問の機会を与えられる。学生は「聞き手」で、企業は「話し手」。役割は最初から決まっていて、その枠を越える場面は、案外少ないのかもしれません。

2026年3月20日に開催された第1回G1グランプリは、その役割を少しだけ入れ替えてみよう、という発想から生まれた大会です。学生が企業を実際に訪問して取材し、自分の目で見て、自分の頭で整理し、自分の言葉で同じ就活生に向けてプレゼンする。出題されるのは「この会社の魅力をどう伝えるか」。15社の参加企業に対して50名の学生が参加し、見学に訪れた方も含めれば会場には100名を超える人が集まりました。

今回、学生たちがG-1グランプリの御礼訪問にうかがったのが、北九州に本社を構える小林青果株式会社です。

70年余、北九州の食卓を支えてきた青果のプロ集団

小林青果株式会社は、1946年に小売業として創業し、1960年に卸売へと舵を切り、現在は青果仲卸を中心に九州全域へと販路を広げている老舗です。仕入れ先は北海道から鹿児島まで全国に及び、地元のスーパーや飲食店、給食センターなどへ毎日新鮮な野菜や果物を届けています。

注目したいのは、単なる「卸し問屋」では収まらない事業展開です。九州エリアで9店舗の小売店舗を運営し、地域のニーズに合わせた商品開発も行い、2023年1月にはEC事業もスタートされています。市場の中で青果と向き合いながら、川下の売り場や食卓まで一貫して見ているからこそ提案できる商品があり、そうした姿勢が長年にわたって地元からの信頼につながってきました。

「青果仲卸」と聞いて、最初にイメージするのは「市場からお店に野菜を届けている人」かもしれません。実際に小林青果を訪ねた山本くん(大学4年)、尾崎くん(大学3年)らも、もしかすると最初はそうだったのかもしれません。けれど扉を開けてみると、そこには想像していたよりずっと立体的で、奥行きのある仕事の世界が広がっていました。

売り場の見え方が変わった、学生たちの発見

山本くんは、振り返りの席でこう語ってくれました。「参加前はプレゼンの経験がほとんどなかったので、今回やってみて、率直に『普段の学生生活ではできないことを体験できた』と感じています。企業をこんなに深く知る機会って、これまでなかったんです。説明会だと、用意された情報を一方的に受け取る形になりやすくて、業界や企業のことを自分の手で紐解いていく感覚があまりなかった。今回は、訪問して、話を聞いて、会社の方と一緒に資料をつくっていく中で、業界も会社もすごく濃く知ることができました」。

なかでも印象に残ったのが、ふだんの生活における何気ない瞬間の見え方が変わった、ということでした。「スーパーの売り場に並んでいる野菜や果物を見ても、前は『美味しそう』とか『高い・安い』しか考えていなかったんです。でも今は、これってどこから運ばれてきたんだろう、誰がどう値付けしたんだろう、季節と産地はどうなんだろうって、自然と頭の中で考えるようになりました」。

商品の向こう側に、生産地と仲卸と小売がつながっている長い流れが見えてくる。職業体験としても、生活者としても、見える景色が少し変わる。就活の枠を越えて「世の中の解像度が上がる」ような感覚も、この大会のもうひとつの収穫だったように思います。

一方通行じゃない就活、というはじめての感覚

もう一人、3年生の尾崎くんも、今までにない新しい就活の形を体験できたと語ってくれました。「これまで参加した就活のイベントは、合同説明会みたいに『一方的に説明を受ける』タイプのものが多かったんです。今回みたいに、自分から会社に行って、自分から質問して、自分の言葉でまとめ直す経験は初めてでした」。

会場に並んだ椅子に座り、説明を聞いて、配られた紙にメモを取って帰る。そうした就活ももちろん大切な機会です。それと並行して、自分から足を運ぶ機会を持つと、出会える業界や会社の幅も広がっていきます。実際に会いに行き、話を引き出し、現場を見せてもらって初めて、「こういう仕事があったのか」「こういう人たちが働いていたのか」と、業界の解像度が上がっていく。さらにそれを自分たちの言葉で発信する。尾崎くんが「こんなに面白い業界・会社があると知れたのが、いちばんの収穫だった」と話してくれたのは、まさに自分から動いたからこそ味わえた、発見の手応えだったのではないかと思います。

尾崎くんはさらに、こう続けてくれました。「今回は、人前で話すことには自分なりに自信があるつもりでした。でも、上位に食い込んだチームを見て、心が揺さぶられました。話の構成も、伝え方も、自分とは違うレベルだなって。雰囲気はわかったので、次はもっと良いプレゼンができると思います」。本番中の悔しさは、終わった瞬間に「次に向けたエネルギー」に変わっていました。

悔しさが、次のプレゼンへの力になった

チームの反省点は、本人たちが誰よりよく分かっている様子でした。練習の時間が思うように取れず、当日の早朝に集まって最終調整をしたこと。本番でタイムオーバーが20秒ほどあったこと。スライドの磨き込みも、もっと余裕を持って取り組むべきだったということ。それでも、二人は口を揃えて「次回はリベンジしたい」と言ってくれました。何が足りなかったか、どこを直せばもっと多くの人に響くプレゼンになるか、一度本気でやり切ったからこそ、改善の手がかりが手元に残ります。これは、話を聞くだけでは得られない貴重な経験だと思います。

一方、企業側として学生を迎え入れてくださった岩本社長は、振り返りの席でG−1グランプリという新たな就活の形を「面白い企画だ」と評してくださいました。「学生さんたちが自社のことを自分の足で調べて、深いところまで掘り下げてくれる。そんな機会はそうそうない。我々が普段当たり前にしていることでも、外から見ると面白く映ることがあるんだなと、改めて気づかされました」「審査員の方からも、小林青果チームは『自分の言葉で話せている』と評価していただいたのは嬉しかったですね。次の機会には、ぜひ優勝を目指して欲しい」という熱いメッセージをいただきました。

企業を知ることは、日常の見え方を変える

青果の世界は、毎日が一期一会だといいます。同じ畑から仕入れたトマトでも、その日の気温・湿度・輸送状況によって状態は微妙に違う。仲卸の担当者は、それを自分の目と手で見極め、どの売り場に、どの値段で、どの量を流すかを判断しています。マニュアル化しきれない知恵が、現場に積み重なっている。学生たちが訪問の中で感じ取ったのは、そんな「人の判断と関係性で動く商売」の手触りだったのではないかと思います。

プレゼンの結果には、たしかに悔しさが残りました。けれど、大会を通じて学生たちが手にしたものは、確かな形で残っていきます。世の中の“食の当たり前”を支えている人が存在すること、そして「自分から知りに行く」という就活のスタンス。これらは、どんな進路を選ぶとしても、これから働き始める日々の土台になっていくのではないでしょうか。

小林青果の社員のみなさまには、何度も学生を受け入れてくださり、本当にありがとうございました。次回のG1グランプリで、リベンジに燃える学生たちがどんなプレゼンを見せてくれるのか。そして、青果という業界の仕事の魅力が、また新しい言葉で語り直される瞬間を、心から楽しみにしています。

協力企業様のパンフレット紹介 PAMPHLET