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インタビュー

子どもの頃の「好き」を、仕事に。──生き物に魅せられた人が集う、エコプラン研究所

誰しも子どもの頃、草むらで虫を捕まえたりして自然の中で遊んだことはあると思います。

そんな「生き物が好き」「自然が好き」という気持ちを仕事にしている会社が北九州にあります。

株式会社エコプラン研究所は、「生物多様性の視点から社会へ貢献する」という理念のもと、1992年に設立。今年で35年目を迎える、自然環境調査を主とする会社です。なかでも、川や山にすむ生き物を調べる「生き物調査」に特化し、北九州市や建設コンサルタントを顧客に、九州全域をフィールドとして自然と向き合ってきました。

魚、昆虫、鳥、植物など――それぞれの専門家が集まり、「生態系まるごと調査できる」のが強み。そして何より、ここは生き物が好きな人が集まる会社です。

調査現場のリアルから、絶滅危惧種を守る取り組み、そして「好きを仕事にする」ということまで。エコプラン研究所で働く皆さんに、学生リポーター3人が伺いました。

「生き物を調べる」が、仕事になる理由

まず、エコプラン研究所がどんな会社なのか教えていただけますか。

1992年に設立した、北九州の自然環境調査の会社です。なかでも生き物の調査に特化していて、社内には自然環境部と社会事業部という2つの部署があります。私は自然環境部で、川や山、あるいは市街地などにすむ生き物を調べています。

生き物を調べるのが、お仕事になるんですね。

「それでどうやってお金を稼いでいるんですか」って、よく聞かれますね(笑)。たとえば空港やダムを作るとき、その開発が自然にどんな影響を与えるかを調べる「環境アセスメント」というルールがあるんです。私たちの調査は、その判断のいちばん基本になるデータになります。

開発をするかどうかの、判断材料になるんですね。

そうなんです。もし貴重な生き物を見落とせば、その場所はそのまま開発されてしまう。ですが、見つけて記録できれば、何らかの形で守ることにつながる。だから「絶対に見落とさない」というのは社員全員がいつも心がけていて、責任の重い仕事です。

「好き」というだけでは、務まらないんですね。

好きは大前提ですね。そのうえで魚、昆虫、鳥、植物と、それぞれの専門家がそろっている。「九州の生き物なら、生態系まるごと調査できますよ」と言えるのがうちの強みなんです。

エコプラン研究所、生き物調査のリアル

高松さんは、どんなふうに魚を調べるんですか。

ウェットスーツを着て、川に潜って魚を捕まえます。漁師さんが投げるような網も使うんですよ。捕まえたら種類と大きさと数を記録して、写真を撮って、放してあげます。

その場で、返してあげるんですね。

基本は写真を撮ったら放流します。ただ、同じ調査でも、虫担当の朝倉はやり方が全然違うんですよ。

虫は地球上でいちばん種類が多くて、ぱっと見そっくりでも別の種、ということがよくあるんです。だから基本は全部捕まえて、標本にして、必要ならば顕微鏡で1匹ずつ種類を調べます。

1匹ずつ、顕微鏡で…!

1ミリ、2ミリの虫もたくさんいますからね。調査が終わったら、その日に採った虫を部屋でグループごとに仕分けるんです。地味な作業なんですけど、これが楽しくて。「お、今日はこれが採れてたのか」って。

大変そうなのに、うれしそうですね!

「好きが過ぎる」と言われます(笑)。とくに、絶滅危惧種のなかでも珍しい種を、その日に自分だけが採れたときは最高なんです。みんなから称賛してもらえるんですよ。

埋立地に舞い降りた、800種の命

社会事業部は、どんなお仕事をされているんですか。

私は「響灘ビオトープ」という北九州市の施設を運営しています。市の施設を民間が運営する「指定管理者制度」という仕組みですね。ここは、もともと海だった場所を埋め立てて作られた土地なんですよ。

埋立地が、生き物のすみかになったんですか。

そうなんです。本当は工場にする予定だった土地に、絶滅の恐れがある生き物がたまたま見つかった。それで北九州市が、工場ではなく生き物の生息場所として残すことにしたんです。私たちは、そこを人の手で守っています。

どんな生き物がいるんですか。

たとえば、日本で5つの都道府県にしかいないベッコウトンボ。それから、草むらで子育てをするチュウヒという珍しいタカの仲間もいます。1年を通して調べたら、全部で800種ほどの生き物がいることがわかりました。

800種…!どこかから来たのでしょうか!

すべて自然にやってきたものです。鳥が種を運んだり、風で飛んできたり。タヌキやキツネは埋立地につながる橋を歩いて渡ってきたみたいですよ(笑)。広さはみずほPayPayドーム福岡6個分ほど。偶然集まった命が、今は豊かに暮らしています。

地道な駆除も、自然を守る大切な仕事

守るというのは、生き物を増やすことですか。

それだけではないんです。「いてほしくないもの」と向き合うことも、守ることなんですよ。外来種ですね。たとえばジャンボタニシ(和名:スクミリンゴガイ)。貴重な水草まで食べてしまうので、成貝を1つずつ取り除き、水草に産み付けられた卵の塊は水中では発育しないので池に掻き落とします。

1つずつなんですね。

卵の塊1つに300個ほど入っていて、それを年に複数回産むと言われています。広い池ですから、毎年駆除しても追いつかない。それでも、減らすために地道に続けています。

そうした活動は、どうやって知ってもらうんですか。

生き物が大切だというのは、頭ではみんなわかっている。でも「では何をすればいいか」は、ぱっと出てこないですよね。だから私たちは、イベントや観察会、小学校への出張授業など、いろんな方法で伝えています。知ってもらうことから、すべては始まるんです。

危険と隣り合わせ。それでも、現場が楽しい

調査の現場って、危険なこともあるんですか。

ありますね。スズメバチに集団で襲われる可能性もありますし、毒蛇もいます。マダニやヤマビルも。ヤマビルは血を吸われても気づかなくて、ふと見たら背中が血で真っ赤、なんてこともあるんですよ。

聞いているだけで、ぞっとします…。

夏の暑さもなかなかで、ここ4、5年は毎回、命の危険を感じるくらいです(笑)。干潟の調査では、ぬかるみにハマって立往生することも。そんなときは泥に手を突っ込むと中はひんやり冷たくて、それで涼をとったり。

現場ではそんな大変こともあるんですね。

大変なことは多いですよ。でも、忘れられない景色にも出会えるんです。一度、北海道の調査でサケが遡上する時期に川へ潜ったら、目の前を何百匹ものサケが群れになって上っていって。九州ではまず見られない光景で、本当に心が震えました。

それは、一生ものの体験ですね。

そうなんです。だから、朝起きるのがしんどい日でも、「今日の現場は楽しそうだな」と思うと、ぱっと目が覚める。やっぱり、現場に出ているときがいちばん楽しい。それが正直なところですね。

自然に寄り添う本社

取材させていただいているこのオフィス、とても気持ちのいい場所ですね。

ありがとうございます。この本社オフィスは風がよく通るんですよ。よほど暑い日でなければ窓を開けるだけで涼しい。生き物を調べる会社ですから、建物もコンクリートや鉄で固めるのではなく、木造にして自然に寄り添う作りにしたかったんです。

考え方が、建物にまで表れているんですね。

住宅街にあるので、周りに圧迫感を与えないよう高さも抑えました。大雨のときに雨水を一時的に溜める仕組みも取り入れています。それから、せっかくこういう場所をつくるなら、生き物を呼び込みたくて。蝶は種類ごとに、幼虫が食べる草が決まっているんです。

では、その草を植えれば…?

「この草を植えたら、あの蝶が来るかも」と狙って植えてみたんです。そうしたら、本当に来てくれて。しかも、絶滅危惧種に指定されている蝶が。今日も、庭を探せば飛んでいるかもしれませんよ。狙って環境を整えれば、生き物はちゃんと応えてくれる。それを自分たちの庭で確かめられたのは、うれしかったですね。

理系か文系かより、「生き物が好き」かどうか

会社内には、やっぱり理系の方が多いんですか。

今のところ理系が多いですね。でも、理系か文系かより前に、「生き物が好き」という人が集まっている感じです。私自身は農学部で、しかも研究室はカメムシの研究をしている先生のところでした。

虫の研究室で、魚の研究を?

「魚の研究をやらせてください」と無理にお願いして(笑)。
私の代から始まった魚の研究が、今もその研究室で続いているらしいんですよ。好きを貫いていくとこういうこともあるんですよね。

朝倉さんも、ずっと生き物がお好きだったんですか。

子どもの頃からずっと好きでした。実は別の仕事を経て、ここに来たんです。「好きを仕事にすると嫌になる」ってよく言いますよね。でも私は、逆なんです。

確かにそれってよく聞きますね。

仕事で覚えたことを休みの日に実践してもっと深く生き物を楽しむ。さらにそこで気づいたことを、また次の仕事に持ち帰る。好きと仕事が、ずっとぐるぐる回っていて、楽しくて仕方ないんです。

生態系を守るために、私たちができること

私たちにも、生き物を守るためにできることはありますか。

直接守るのは、正直むずかしいんです。だからこそ、暮らしの中でできることをやってほしくて。ごみは正しく分別する、エネルギーを無駄にしない。それから、地元で採れたものを新鮮なうちに食べる「地産地消」も、めぐりめぐって自然を守ることにつながります。

身近なことから、なんですね。

そうです。いつも見ている当たり前の景色が、実は生き物のすみかだったりする。ふと立ち止まって見直してみる、観察会に足を運んでみる。そんな小さなきっかけを続けることが、今ある自然を守ることにつながるんです。

専門家でなくても、関われるんですね。

それに、会社を動かすにも、生き物の専門だけでなく、いろんな知識を持った人が必要です。生き物の大切さを「伝える」のも、私たちだけでは難しい。皆さん学生の視点でこそ、できることがある。ぜひ、いろんな形でこの世界に関わって、活躍してほしいですね。

取材を通して見えてきたのは、子どもの頃に夢中になった「好き」を、そのまま大切に握りしめてきた人たちの姿でした。

その「好き」は、ただ楽しいだけのものではありません。一つの命を見つけ、記録すること。それが開発の行方を変え、消えるかもしれなかった自然を守ることにつながっていきます。好きという気持ちが、いつのまにか、社会を支える力になっているのです。

そしてその輪は、専門家だけのものではないのだと、皆さんは教えてくれました。身近な景色にふと目を留めること。知って、誰かに伝えること。私たちにもできる小さな一歩が、きっと同じ場所へとつながっています。

子どもの頃の「好き」を、忘れずにいること。

その先には、生き物と向き合い続ける豊かな世界が、広がっているはずです。

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